「ルティス、頼む! 恋人のふりをしてくれ!」
玄関から飛び込むなりかけられた聞き慣れた声に、一瞬頭が真っ白になった。
ばたばたと走る足音が聞こえて、ああ帰ってきたと思った。
たまたま届け物に来てくれていたウルト村のユズと、それから一緒に暮らしている彼の実の妹アイメルと。三人でお茶を飲みながらとりとめもない話をしているときだった。いつもの軽快なものとは違ったけれど、間違いなく彼の足音であることは聞き分けられたから、ひとつ出迎えでもと揃って戸口に向かったところにこれだ。
たぶん、凍っていた時はそれほど長くはなかったのだと思う。いち早く硬直から立ち直ったユズが、机の上に置いてあった便箋を丸めて彼――アヴィンの頭を軽くはたいた。
「えい」
ぺすん、と間の抜けた音がする。
「あたっ! 何するんだよユズ姉!」
さして痛くはなかっただろうが、びっくりしたには違いない。走ってきた勢いそのままにふうふうと息を乱して仁王立ちしていたアヴィンが、たたかれた場所をさすりながら抗議する。
彼の背後ではすぐ後を追ってきていたらしいマイルが、青い目を細めて苦笑していた。こちらは特に肩を揺らしている素振りもないので、おそらくアヴィンの呼吸が荒いのは単純に焦っているか興奮しているかのどちらかゆえなのだと思われる。
「何って、それはこっちの台詞よ」
ユズの声に、はっとしたようにアイメルが胸の前で両手を組んだ。
「……そ、そうよ、お兄ちゃん。いきなり何なの? しかもふりって……ふりも、何も」
「アイメル」
改めて他人の口から指摘されるのは恥ずかしいので、ルティスは義妹の言葉をごく穏やかに遮った。
そう、義妹だ。ただし将来的にそうなるはず、というだけで今はまだ違うのだけれど。
恋人のふりも何も、自分――ルティスと、目の前のアヴィンは自他共に認める仲、正真正銘の恋人同士である。
オクトゥムの使徒を説得するための旅に出たいと打ち明けたとき、ルティスは彼の気持ちを最後まで聞かずにやめさせた。結局戻ってきたらすぐに続きを聞かせるとの宣言どおり、帰った彼女を迎えたのは不器用な抱擁と、告白と、幸せな日々だった。
実はすでに結婚も言い交わしている。ただし約束したというだけで、いつ婚儀を挙げるのかやお披露目はするのかなど具体的なことはまだ何ひとつ決めていない。それでも周囲の人々は皆もうすっかりその気で、アイメルなどいつ頃からかルティスのことを早々義姉さんと呼びはじめた。
もしかしたら婚儀も何もなく、気づけば夫婦になっているのかもしれない。誰もがそれを当然と思い、日々は静かに流れていくのかもしれない。最近はそれはそれで幸せなことだとのんびり考えるようになっていた。
同じように考えていたのはおそらく自分だけではなく、だからアイメルとユズは微妙な反応を示しているのだろう。マイルの顔にも「ほんとに言うとは思わなかった」と書いてある。一応何がしかの忠告はしておいてくれたらしい。どうも無駄に終わったような気配がしているけれども。
「アヴィン、大丈夫だから落ち着いて。いったい何があったの?」
声に苦笑が混じってしまうのは仕方がない。アヴィンはいつだってまっすぐだ。だから裏切りなどあるはずがないし、他意もないに違いない。
疑ってなどいないがしかし、そこで彼はようやく己の失言に気がついたようだった。
「あ、いや、だから。ふりじゃなくて……いや、ふりなんかする必要はないんだ。だけど演技は必要で、だからその」
「大丈夫、わかってるわ。何があったの?」
あたふたと振り回されている手を両手でとって、軽く握る。きゅっと指に力を込めると、反対にアヴィンは不自然に強ばっていた肩の力を抜いた。マイルがけらけら笑い出す。
「あははっ、アヴィン。相手がルティスで良かったね。言い方ちゃんと考えなよって後ろから声かけたのに全然聞いてないから、もう僕どうしようかと……くくく」
「う、うるさいな。焦りすぎたとは思ってるよ。しょうがないだろ、早く早くってそればっかり考えてたんだから」
「うん、だから早く説明しないとね」
お気楽なやり取りに、眉をひそめていたアイメルも苦笑した。入り口を広く開けて、身振りでマイルを中へと導く。ユズも最後まで聞かねばとばかりに椅子を引き、その背を追ってルティスはアヴィンの手を引っ張った。
「アヴィンも焦りすぎだけどさ、急がなきゃならないのは本当なんだ。すぐ説明するから、ルティス、君もすぐに決めてほしい」
アヴィンもマイルも座ろうとはしない。
厄介ごとの気配を察して、お茶を入れようと厨房に向かいかけていたアイメルが踵を返して戻ってきた。
果たしてマイルが話し始めたのは、ギルドで請け負ってきた仕事のことだったのだ。
時は半刻ほど遡る。
アヴィンとマイルは、冒険者としての仕事を求めて王都のギルドにやってきていた。
先の戦いの際、ミッシェルやトーマスとともに将来ガガーブを越えるという約束をしたが、それは未だ果たされていない。というより、まだ何もできない状態にある。
あの大地の傷痕を越えるための気象条件はミッシェルが力の及ぶ範囲で調整し、人間を運ぶための船はトーマスが用意する、そういうことで計画は始まった。前者はともかく後者にはもちろん時間がかかる。船のことなどまったくの門外漢であるアヴィンとマイルは、材料集めや技術者探しこそ協力できるものの、直接手を出すことはまったくできない。予行演習の段階まで行けばできることはたくさんあるに違いないけれど、現段階では待つことしかできないのだ。
何か協力できることはあるかと申し出たが、今のところはないとの答えだった。
それなら二人に張りついていても仕方がない。時間は有意義に活用すべし、ということで、ここ数ヶ月はギルドの仕事を片付けたり村の畑仕事を手伝ったり、それからたまには日がな一日見晴らし小屋で景色を眺めてみたり。ある意味とても贅沢な日々を送っていた。
最近はもっぱらフィルディンのギルドを拠点として動いている。マイルは両親になるべく心配をかけないようにしたいと言うし、アヴィン自身もそれほど長いことルティスとアイメルと離れていたくはない。そうでなくとも遠くない未来に自分たちは危険な賭けに挑むことになるのだ。どれだけ留守にすることになるやらわからないのだし、今のうちに一緒の時間を過ごしておきたいと思うのは何もこちら側の一方的な思いではないだろう。
色々あったおかげで、アヴィンとマイルは若年ながら腕利きの冒険者としてマイスターに認識されている。危険なものが舞い込む頻度もそれなりには高かったけれど、ともかく仕事にはまったく事欠かなかった。
その日も打診されたのは、他のものでは手に負えないと判断されたものだったらしい。
「…………追いはぎと人さらい?」
アヴィンが鸚鵡返しにつぶやくと、マイスターは苦虫を噛み潰したような顔でうなずいた。
「若い男女の二人連ればかり狙った犯行だ。気づかれないように近づいて気絶させて、男からは金目のものを奪い取る。女はそのまま連れていく」
「それはまた……帰ってきた娘さんはいないんですか?」
「まだいない」
マイルの質問への返答は容赦なかった。表情を厳しくして黙り込む幼なじみを一度見やり、アヴィンも問いを重ねる。
「場所は?」
「王都の周辺。中じゃない。男のほうは帰ってきてるんでな、聞き取りをして場所と時間はわかってる。今日までに五件あったが、どれも見事にばらばらだ」
「場所も時間もばらばらなのか。じゃあ、目撃者も期待できないんだな」
「期待しないほうがいいだろうな。なにしろほれ、男と女が」
「……ああ……」
声を潜めるマイスターにうなずき返して、遠い目で窓の外を見つめる。
若い男女。要するに恋人同士なのだろう。のぼせ上がった二人が人目のある王都の中を避けて散策やらその他色々していたというのなら、目撃者などないと思ったほうがいい。
彼としても気持ちはわからないでもないので、単純に不用心だと責める気にはなれないが、もう少し気をつけることができなかったのかとも思う。
大切な人と一緒にいるのだから、しかも安全な場所を出てきているのだから、危険が迫ってくる可能性を頭の隅にでも置いておいて――いや。まあ、自分が実際同じ状況だったらやっぱり浮かれているかもしれないので、何も言わないでおくことにしよう。
「手口が同じだから、同一犯と見ていいだろう。ただまだ規模がちいさいから」
「犯人の人数がわからないですね。複数であることは間違いないでしょうけど」
マイスターの言葉を、マイルが思案げに継いだ。
「よそのギルドに問い合わせてみたが、同じような事件は他では起こってないらしい。少数精鋭を送り込めば潰せん数じゃあないだろう。お前たちに頼みたいんだが、かまわないか?」
「ああ、そりゃもちろん。放ってはおけないからな。ただ……」
さらった娘たちはまだ見つかっていないというから、犯人たちはどこかに拠点をかまえて潜んでいるのだろう。王都周辺の地域に限られるとはいっても、フィルディン王国は人の住む地以外は山地や深い森が多い。しらみ潰しにあたっていたのでは時間の無駄だ。それどころか、新たな犯行が起きかねない。
となると、有効な手段は絞られてくる。
「やっぱり囮を用意するのがいいんじゃないかな」
「そうだろうな。けど、俺たち二人とも男だぞ」
「どちらかが囮で、どちらかが近くに隠れておけばいいと思うけど……ええと、マイスター。今フィルディンには女性の冒険者は」
「生憎いない」
「あ、やっぱり?」
アヴィンとマイルは二人して肩を落とした。
わかっていて仕掛けるとはいえ、万全を期するのであれば女性の囮役も腕利きであることが望ましい。ルキアスがいりゃあ話は早かったんだけどなあ、とぼやくと、マイスターが目をぱちくりさせた。
「ん?」
訝しく思う間もなくごく近くに突然人の気配が現れる。
「ほほほ、お困りのようね」
「うわびっくりした!」
「ミューズ!? おまえどこから!」
マイルも気がついていなかったのだろう、本気で逃げ腰になっていた。びっくりして問い返すアヴィンのことは綺麗に無視し、エル・フィルディン王国の世継ぎの姫であるミレディーヌ王女は居丈高に言い放った。
「よろしくてよ、民の安寧を守るのは王家の務め! 恋人役というには少し不足ですけれど、特別にわたくしが協力してさしあげますわ。ありがたく思いなさい!」
「いやだから、どこから来たんだよ……」
「入り口からに決まっているでしょう」
至極当たり前の答えを返して胸を張る。いつも無駄に自信満々で偉そうなのはまあ微笑ましいといえばそうなのだが、だから何故ここにいるのか。緊急時であればともかく……いや、確かに緊急時ではあるのだが、まだ王家にまで情報が伝わっているとは考えにくい。ということは、また抜け出してきたのだ。
「そっちの仕事はいいのかよ」
半眼で問いただしても悪びれる様子はまったくない。
「いいのよ。……まったく毎日毎日毎日毎日! あれに許可をこれに許可を目を通してサインをしろドレスを着てテラスに出ろ」
「殿下」
仕事の手伝いに来てくれたのか、それともただ愚痴を吐きに来ただけか。とにもかくにもよく回る口で自覚なく近況報告をしてくれていたミューズはしかし、背後から聞こえた声に飛び上がった。
「あ、マーティさん」
マイルがのほほんと先輩冒険者の名を呼ぶ。大臣試験に合格し、今や第一王女付きの秘書官となった彼は、後輩二人とマイスターににっこり微笑みかけてから、そのままの表情で主に向き直った。
「お迎えにあがりました。さあ、帰りましょう」
「マママママ、マーティ……どうしてここにいるのかしら」
ぎぎぎ、と首に歯車でも入っているかのような動きで振り返っても、笑顔は崩れない。というか彼は近頃何か得体の知れない迫力のようなものを身につけた気がする。
「地下から脱走されたんですから、行き先はだいたい予測がつきます。帰りますよ」
「わ、わかりましたわ。それでは恋人役はあなたにお願いしましょう。罪のない民がかどわかされているの、正義と法を守らねばならない王族として放ってはおけなくてよ。それは仕える者としても同じでしょう」
「そうですね、他に適役がいないのでしたら考えましたが」
「でしょう!?」
「ですが、アヴィン君たちがいますから心配ありません。彼らの実力は殿下もよくご存知でしょう」
「いえ、それでも心配だからわたくしは……」
「殿下には殿下にしかできないことがあります。というわけで帰りますよ」
「だから……」
「帰りますよ」
「いやああぁっ! 書類仕事はもういやああ!」
なにかよほど鬱屈していたらしい。らしくもなく取り乱すミューズを半ば引きずりながら、マーティは爽やかに片手をあげた。
「すまないね、任せっきりになってしまって。手伝いたいのはやまやまなんだけど、少したてこんでいて」
「かまいませんよ、大丈夫です」
マイルがうなずき、アヴィンも手をひらひら振って応える。
「任せとけ。どうにもならないと思ったら助太刀頼みに行くからさ、悪いけどそのときはよろしくな」
「もちろんだよ」
長く尾を引く、かつ甲高い悲鳴に道行く人が振り返る。しかし、その正体を見極めてしまえばなんということはない。皆一様に苦笑したり見て見ぬふりをしたりして、誰一人としてミューズを助けようとするものはいなかった。
世継ぎの姫が深窓の令嬢どころか男性顔負けの勇ましい女性であることは、最早王都では公然の秘密となりつつある。もともとそれなりに有名人であったらしいマーティに引きずられて王城に入っていく娘が誰であるのかなど、想像することは実に簡単だ。“姫”としては少々問題があるかもしれないが、世継ぎとしては非常に頼もしい。民にはおおむね好意的に受け止められているらしいので、周囲の面々も一安心といったところだろうか。
「……まるでつむじ風だな」
マイスターが嘆息した。その感想にしみじみ同意しつつ、机の上の資料を取り上げる。
「ほんとに見事にばらばらなんだな」
地図に赤いバツ印がつき、その横に時刻が書き込まれている。つぶやくと、マイルが横から覗き込んできた。
「本当だね。とりあえず午前中はまだ起こってないみたいだけど……単純に獲物がいなかったのかな」
「おそらくはな。とりあえず掲示やら何やらで注意を呼びかけちゃいるが、できるなら今日中に片付けてしまいたい。とにかく一人でもおびき出すか捕まえるかできれば後はどうにかなるだろ」
「なあ、マイル」
ふと思いついて、アヴィンは幼なじみの青い目を見た。
「ん?」
「いっそ、シャノンに頼んでみるか?」
「ええええっ!?」
マイルは大げさな――いや、本人からしてみればちっとも大げさなつもりなどないのかもしれないが――悲鳴をあげてたっぷり十歩は後ずさった。何もそこまで、と突っ込む暇もなく両手を前に突き出し、激しく振っている。
「なんだ、コレか?」
「違いますっ!」
にやりとして小指を立てるマイスターにも速攻で否定である。こればかりはつきあいの長いアヴィンにも、照れなのか本気で拒絶しているのかいまいち判別がつかない。未だに。
「いいじゃないか、ふりなんだし」
「ふりでもなんでも駄目だよ! そんなこと頼んだらまた暴走するじゃないか! そもそもあの子は戦えないよ、一般人なんだよアヴィン!」
「うん。……いやあ、でもさ。なんか何があっても生き残りそうな気がしないか、シャノンって」
「それはまあ同感……じゃなくて!」
「ならギルドから報酬を出すってことにして募ってみるか。ふりでも何でもお前らを相手にできるとなっちゃ、協力してくれるお嬢さんの一人や二人や三人や四人すぐにみつかるだろうさ」
「たくさんつれてってもしょうがないだろ」
「……アヴィン、突っ込むところ間違ってるよ……」
マイルは今度こそ脱力してがっくりとうなだれた。よしよしと背中をなでてやっても反応すらしない。
まさかこんな初歩的なことでつまづくとは思わなかった。それが正直な感想だ。しかし実質有効な手段といえば囮作戦くらいしか思いつかない。犯行現場の分布がもう少し絞られているのなら、拠点を探し出すことも不可能ではないのかもしれないが、今あるだけの情報では無理だ。効率が悪すぎる。
「ていうか、アヴィンさ」
「ん、何?」
「ルティスに頼めば一番早いんじゃないの」
「…………あ」
忘れてた。
ぽん、と拳をもう片方の手のひらに打ちつける。
いや、忘れていたわけではない、決して。忘れていたというよりは、意図的に意識の外へ追い出していたと言うべきか。
だって、彼女は。
「……あんまり危ないこと、させたくないんだよなあ……」
アヴィンは一人ごちて、ウルト村のある方向を振り返った。
本人に知られれば、一緒にオクトゥムにまで挑んでおいて今更何をと言われそうだ。でも、そう思ってしまうのだから仕方がない。
ルティスが彼のもとに戻ってきたのは、ほんの数ヶ月前のことだった。光を見失い、闇の中でもがいている使徒たちを救いたい。自分にできることは限られているのかもしれないけれど、それでも世界を愛しいと感じられるようになるまで手助けができたら。そう語った横顔は綺麗でつよくて、侵しがたい決意に満ちていた。
だから止めないで、会いたいのを我慢して我慢して、ようやく一緒にいられるようになったのだ。彼女からはまだ多くを聞けていないけれど、旅路は過酷だったに違いない。裏切り者と罵られることもあっただろう。新たに負っただろう傷も悲しみも正面から受け止めて笑う少女を、再び人の悪意にさらしたくはなかった。あまり過保護にするとへそを曲げそうな気がしないでもないので、あくまでさりげなく、を心がけてはいるのだが。
……などと真面目に考えていたのに、マイスターはやっぱり小指を立ててにやりと笑った。
「コレだな?」
「………………いや、だから。……まあ、そうなんだけどさ……」
マイルとは異なり、こちらは否定する材料もない。頬が熱くなるのを自覚しながら、視線を明後日の方向にやる。矛先が自分からそれたためか、余裕を取り戻したマイルが今度はアヴィンの肩をぽんぽんと叩いた。
「君の気持ちもわかるけど。でもきっと、ルティスが後で今回のことを知ったら、どうして自分に教えなかったんだって言うと思うよ」
「……だよなあ」
べつに魔獣とか猪とか熊なら安心して見てられるんだけどなあ、人間はなあ。
ぶつぶつとぼやきとも愚痴ともつかぬ声を拾って、マイスターが妙な顔をした。
「熊でも安心なのか」
「ああ、熊程度ならナイフ一本で余裕だよ。マイスターも会ったことあるだろ、マイルのおじさんが操られて王都に来たとき一緒にいた子」
「ああ、あの滅法強い別嬪さん。ならちょうどいいな、美人なら余計に狙われやすいだろうし、囮としては申し分ない。……お前も気合が入るよな?」
「マイスター、悪い顔になってるぜ……」
どうやら囮役は自分とルティスということで決まりになりそうだ。気は進まないが、判断を先送りにしたがために新たな被害者が出てしまってはいけない。
「じゃあ、決まりだな。ウルトなら往復してもそんなに時間はかからんだろう? 正午までに戻ってこられるか」
「ああ、大丈夫だ」
「俺は援護の人員を集めておく。細かいことは詰めておくから、宿で待機しててくれ」
「わかりました」
二人はうなずきをひとつ返してすぐにギルドを飛び出した。ウルト村まではそれほど距離があるわけではないが、今日中にすべてを終わらせるのだと思うと気が逸る。
後ろをついてくるマイルが弾んだ息の合間に何事か言っているのがわかったが、耳元を吹いて過ぎる風の流れであまりよく聞こえなかった。
「……と、いうわけなんだ」
アヴィンに口を挟ませる隙も何もなく、マイルの説明は鮮やかに終わった。
急いでいるというわりに途中会った人々の近況もしっかり含まれていたが――そして相変わらずの様子に笑みはこぼれてしまったが――要するに二人が自分に求めていることは単純、ただひとつだ。
「わかったわ。一緒に行けばいいのね」
拒む理由など何もない。人を相手に立ち回りをするのは久しぶりだが、鍛錬自体は毎日欠かしていないのできっと大丈夫だろう。
しかし、裏腹にアイメルは不安そうにルティスの服の袖口を握った。
「でも、若い女の人ばかりさらわれているんでしょう? 義姉さんがいくらすごいっていったって、やっぱり心配よ」
「アイメル、私は大丈夫」
「でも……」
もともとルティスは、オクトゥムの使徒の中では諜報や工作を主とした任務についていたのだ。一対多数の戦い方や、気配を隠して敵陣に潜り込む方法など、あらゆる技術を叩き込まれた。そして自分もまた、必死でそれらの知識を吸収していった。
今回の話はまさにそういった類の経験が物を言うことになるだろう。罪もたくさん犯してきたけれど、足掻いていたあの日々は決して無駄ではなかったのだと。身につけたことを、今こうして人の役に立てられるのなら、生きてきた甲斐があるというものだ。
「大丈夫だ、アイメル。ルティスは俺が守る」
「お兄ちゃん……」
「アヴィン」
アヴィンが歩いてきて、妹が握っている袖とは反対側の手をとった。指先に、握りしめる力を感じる。
よほど緩んだ顔をしてしまったのかもしれない。目が合った瞬間、彼は動揺したように視線をそらして口の中で何事かもごもごつぶやいた。
勢いのままに何もかもぶちまけて、末に開き直るところは変わっていない。ユズなど照れた様子ながらも手は離さない弟分をあきれた目で見て、ちいさくごちそうさまとつぶやいている。ルティスはアイメルと顔を見合わせ、肩をすくめて笑った。
犯人たちは、街である程度さらう娘の目星をつけているのではないか。
マイスターが集めてくれた冒険者の中からそんな声があがったことを聞いたのは、フィルディンの宿の一室の中だった。
カラムロ・カラムスの執筆した『疾風のラヴィン』の影響もあり、少々困ったことにアヴィンは地元であるフィルディン王国ではそれなりに有名人になってしまっている。ただ、本当に顔見知りになっているのはあくまで周辺の村や王都の住人だ。下手人集団は最近よそから流れてきた人間である可能性が高い。もしかしたらギルドの人の出入りもある程度見張っているのかもしれないが、ここ数日では一度きりしか出入りしなかった若造の顔など、はっきりと覚えてはいないに違いない。
ただ大事をとって、手はずの確認は間に数人を挟み、ギルドとは離れた宿の中で行われた。
「あんまり人数が多いと気づかれるだろうから、囮以外に配置するのは三人だってさ」
言伝を受けた街の少年が、地図を人差し指で示した。
「指定はココ。狩人が本職の冒険者が二人、もう木の上に待機してる。えと、マイルさん? も、今のうちに合流しておいてって」
伝言は紙に残さずすべて口頭で行われたものらしい。天井をにらみながら一生懸命に記憶を手繰る少年に、マイルが優しい笑みを向けた。
「わかったよ。アヴィンとルティスが来るのを待ってればいいんだね」
「うん。……えーと、思う存分見せつけてやれって。マイスターが言ってたのか他の人が付け加えたのかは知らないけど」
「……見せつけるってなあ……」
アヴィンはあきれた声を出して片手で頭をかいた。要は一緒に街を一回りして目をつけさせ、おびき出せばいいということなのだろうが。
ふと気づいて頭に巻いていたバンダナをほどく。赤いバンダナは自分のトレードマークといってもいいほどのものだが、だからこそ覚えられているかもしれない。外見的特徴は極力排除しておくべきだった。何しろ目の前の伝言役の少年が、バンダナの兄ちゃんに伝えろって頼まれた、と宿にやってきたくらいなのだ。
茶色の髪は少々赤みが強いが、とりたてて珍しいものでもない。目の色なんてよほど近づかなければわからないだろうし、他に目立つものはなんだろう。
「あ、剣は持ってないほうがいいよな。囮としては。マイル、持っててくれないか」
「うん」
長剣は鞘ごと外し、マイルに手渡した。ルティスともども短剣を腰に帯びてはいるが、街を一歩出れば魔獣が闊歩しているこのご時勢、このくらいの武装は大人なら誰だってしている。
「これは……じゃあ、ルティス持ってて」
「え?」
返答を待たず、アヴィンはルティスの後ろに回った。先の辺りだけ結われた黒髪に、赤いバンダナを巻きつける。少しふくらみを持たせるように結ぶと、リボンのように可愛らしくなった。
「よし、これなら俺のバンダナだってわからないよな。……前から思ってたけど、ルティスも赤が良く似合うな」
「え、と」
すぐに答えが返ってこない。不思議に思って顔を上げると、彼女は頬を染めて曖昧な表情で立ち尽くしていた。困っているわけではないようだが――かといって不快そうでもない。わからない。
「すごいでしょ。あれ、素なんだよ。素」
「すげぇ……! さすが冒険者は違うぜ!」
「まあ冒険者はあんまり関係ないけどね。アヴィンだから」
何をひそひそやっているのか。いつの間にかマイルと少年が二人固まってささやき交わしていた。
「……何やってんだ?」
問いかけてもマイルは笑うだけ、少年は背筋を伸ばすだけで何も言ってくれない。ルティスがごほ、と咳払いをした。
「もうとっくにお昼を過ぎてるわ。明るいうちに決着をつけたいんでしょう? 行きましょう」
その言葉を合図に、捕り物は始まったのだった。
空は青く晴れ渡っている。
ちぎれ雲がふわふわと流れ、その落とす影が、風で不規則に揺れる花の上にかかったりかからなかったり、飽きることのない光景を作り出している。水場ではしゃぎすぎたちいさな男の子が目の前で転んだので助け起こしてやったら、追いかけてきた母親に頭を下げられた。アヴィンと二人、手を振って見送る。
「……平和ね」
先ほどの宿で包んでもらったサンドイッチをぱくつきながら、ルティスはきらきらと光る噴水の向こう側を透かし見た。あちら側でもやはり、子ども数人と犬がじゃれあっている。
「ほんとにな。あんな事件が起こってるなんて、信じられないくらいだ」
罠を張ってある場所で落ち合う時間は、おおまかに決めてあった。それまでは二人でぶらぶらしていればいい。ちょうどお昼時でお腹もすいていたので食堂よりは人目につきやすいだろうと、外で昼食をとることにしたのだ。
「そういや、今日はスカート長いんだな」
サンドイッチはそれぞれのひざの上に載っているので、必然的にそこに目がいくのだろう。つぶやいたアヴィンにルティスは何気なく返した。
「ええ。短いほうが良かったかしら」
普段の彼女は、丈の短い服を着ている。単純に慣れと、動きやすいからだ。長いスカートは何をするにも裾が足に絡み、機敏に動き回ることができない。アイメルやユズのように女性らしく着こなしてみたいと思わないでもなかったが、つい走り回ってしまうわが身を省みれば、文字通りそれが身の丈に合っているということなのだろう。
「あ、いや、えと」
「心配しなくても大丈夫よ、下は短いから。立ち回りになったら、これを取ってしまえばいつもどおりなの」
言ってルティスはぽん、と自分のひざをたたいた。
わざわざ重ね着などしてきたのは、おとなしそうな恰好をした娘のほうが標的になりやすいのではないかと考えたからだ。昔は丈の短い服など眉をひそめられる対象でしかなかったというけれど、最近はそうでもない。若い娘に限ってではあるが、堂々と足を出して歩き回っている女性も皆無ではなかった。そうでなければ使徒だったころ、実用重視の服装で街に溶け込むことなどできはしなかっただろう。
「…………」
「……アヴィン?」
少しだけ過去に思いをはせていたら、隣のアヴィンは柔軟運動でもするかのように自身のひざに顔を埋めていた。サンドイッチはいつの間にか食べ終わっていたらしい。男性はおしゃべりしていても食事が早い。
「アヴィン、どうしたの?」
「…………いや、うん。男ってバカだよな……」
「何の話?」
さっぱり意味がわからない。何か衝撃を受けたらしくうめいているが、原因がわからないので慰めようもなかった。とりあえず背中をなでてやる。と、その手をつかまれた。
「……ルティス」
「ええ」
表情には出さず、声だけで気づいていることを伝える。
異質な視線を感じた。そのことに気づいたのは、おそらく二人ほぼ同時だ。
空は高い。周囲には子どもの笑い声があふれていて、恋人と思しき男女の二人連れもちらほら姿を見かける。話していればちらちらと自分たちに視線を投げかけていくものもいて、けれどそれらは単純に見かけない顔に対しての好奇心だったように思えた。
だが。
「どうやら私たちに目をつけてくれたみたいね。他の人じゃなくてよかったわ」
「思ったより早かったな……」
アヴィンが上体を起こし、ルティスの肩に手を回してきた。抵抗せず身を寄せて、その胸に額を押しつける。恥ずかしいなどと言っていられる状況ではない、むしろいちゃついていると思ってくれれば好都合だ。傍目にはこれから人気のないところへ行く算段をつけているように見えることだろう。低くささやき交わされている言葉の内容は事実そのとおり。ただし、周囲が想像するような甘い目的ではないけれど。
頭をひと撫でして、アヴィンの大きな手は離れていった。大急ぎで残りのサンドイッチをたいらげ、包み紙をたたむ。
「宿に戻って捨ててくる暇は……ないわね。思ったより時間がたってたみたい」
「仕方がないさ、そのまま持っていこう」
うなずいて、伸ばされた手をとる。包み紙を隠しに押し込むついでに、腰に下げた短剣の感触を確かめた。
歩を進めるごとに喧騒が遠ざかり、やがて人の声よりも風が木々を揺らす音のほうが強く聞こえてくる。王都の門から外へ出ても、まとわりつく気配は離れてはくれなかった。これは間違いなく当たりだ。
街道を少し進み、右手に折れて。こんなときでなければ少しは散策している人もいるのかもしれない。いかにも休憩するのに都合のいい形と大きさの岩が、丈の低い草の中にごろごろと転がっている。二人は手をつないだまま揃って一番大きな岩に腰かけた。
「……ついてきてるよな」
「ええ。一人増えた。今は二人。やっぱり人数はそんなにいないのね」
睦言のように顔を寄せ、ひそひそ話す。緊張は、あまりしていない。自分の力は自分が一番良くわかっているし、隣にはアヴィンがいる。そして見えないが、マイルも、他の冒険者たちも待機しているはずだ。油断してはいけないのだろうけれど、腹の底はちゃんと冷えて落ち着いていた。
ふと抱き寄せられる。
「見られてると思うと落ち着かないぜ……」
演技にもう飽きてきたのかもしれない。どこかうんざりした調子でぼやくのに、こみ上げてくる笑いを抑えることはできなかった。
「仕方がない、でしょう? みんな一番油断しているところを狙われているみたいだもの。ほらほら、もう少しがんばらないとおびきよせられてくれないかもしれないわよ、冒険者さん?」
「あのなあ」
首の後ろがちくちくするような錯覚を覚える。獲物を前にして殺気と欲の入り混じった視線は、間違いなく賊のもの。マイルたちも見ているのだろうが、そちらは見事に気配を木々の中に溶け込ませている。後で散々からかわれそうだが仕方がない。仕事なのだし。それは置いておいて、とりあえずあと一押しといったところか。
しなだれかかろうとしたらかわされた。肩をつかんだ手は耳を包み込み、頬をするりとなで、指先は顎を捕える。伏目がちになった緑色の瞳が至近距離まで近づいてきて、ルティスはさすがに慌てた。
「え? あの、ちょっと待って。さすがに……」
そのときだった。
背後からそれぞれに向かって伸ばされた腕をほぼ同時に避ける。
身を低くして左右にわかれ、喉元に短剣をつきつけた。一連の動作は、すべて一瞬で終わったことだった。
「……て、てめえら……!」
アヴィンに襲いかかろうとしたほう、無精ひげを生やした中年男がうめく。一方でルティスの背後に迫ってきていた男はまだ若かった。どちらも切れるか切れないか、絶妙な力加減で頚動脈に押しつけられた刃物を見て、脂汗を流している。
「……素人、だよな?」
「ええ。素人だわ」
自信なさげに問うてくるアヴィンに、ルティスは確信を持って応じた。
「作戦は悪くないと思う。でも、気配の消し方も視線のごまかし方もなってない。襲いかかるタイミングも早すぎるわね。もう少し待ってからのほうが気づかれる確率も低くなるんだけど……同じ手口で何度も成功したせいで、気が逸ったのかしら?」
若い娘に断じられて黙っていられるわけがない。わけがないが、こめかみに浮いた青筋は的確に追いかけてくる刃先によってすぐにその姿を消した。
裏腹に緊張感のない声でアヴィンはぶつぶつつぶやいている。
「このままギルドに連行するか……それともアジトまで案内させるか。おまえらどっちがいい?」
「な、なめんじゃねぇ!」
どすんと重い音をたてて、男の肘がアヴィンの鳩尾にめり込んだ。ぐ、とうめき声ひとつもらして彼が体を折る。その隙に、ルティスが捕えていた男も短剣の届く距離から逃げ出した。
「あ!」
叫ぶが、彼らはもう走り出した後だった。
「……ぐっ……くそ、待て……!」
アヴィンが叫ぶ。しかし聞くわけがない。男たちの後姿はあっという間に見えなくなり、それとともに道の左右の木々の上からふたつの気配が一瞬現れ、遠ざかっていった。
「待て、待ちやがれ……! ……って、もう聞こえないか」
「さすがにね」
けろりとした顔で姿勢をもとに戻し、アヴィンは額に手をかざして街道の向こうを見やった。相槌を打ちながら、マイルがごく近くの茂みをがさごそかきわけて出てくる。
「なんだよ、マイル。けっこう近くにいたんだな」
幼なじみたちは手をたたきあった。肘鉄を叩き込まれたアヴィンだが、それほどダメージは受けていないらしい。横目で確認してほっと息をつく。それどころかマントに葉っぱがくっついてるぞーなどとマイルの背中を払ってやっているので、先ほどとはまたずいぶん違う、お気楽なことこのうえない光景だ。
「さっき彼らを追っていったのは、ギルドの冒険者なのね?」
尋ねると、マイルは自分も金髪から木の葉を払い落としながらうなずいた。
「うん、そうだよ。普段森の獣を相手にしてる人たちだから、気づかれることも見失うこともないだろうってマイスターが。目印をしていってくれてるから、僕たちも追いかけよう」
本職は狩人だと聞いてわかっていたが、それにしてもオクトゥムの使徒顔負けの身のこなしだったように思う。確かに彼らであれば、確実に賊を追跡して拠点を発見してくれることだろう。実を言えば、取り逃がすことまでが作戦のうちだった。あとは向こうが迎撃の態勢を整える前に突っ込んでいって、そこにいるであろう娘たちと、できれば奪われた財産も取り戻すことができれば終わりだ。
「アヴィン、お腹は大丈夫なの?」
一応聞いておこう。そう思って上目遣いに見上げる。う、と何かが喉に詰まったような音を出したので一瞬眉をひそめたが、マイルは隣で笑っている。ということは、問題ないのだろうか。角度的にちょうど死角だったので、どの程度の深さだったのかもわからない。
「ああ、大丈夫。……こら、マイル! 何笑ってるんだよ」
「べつに? ただおもしろいなあと思って。いいから行こう、ほら早く。早くすませて思う存分うわ!」
ぶん、と振り回された腕をよけて、マイルはなおも笑った。アヴィンにしても当てる気はなかったのだろう、速度にも正確さにも甚だ欠けた攻撃だったが――いったい何を通じ合っているのかこの親友たちは。
「待て、マイル!」
「追いかけるのは僕じゃなくて犯人だろ! ルティス、君も!」
「え、ええ!」
これから捕り物に向かうにしては緊張感が欠けていた。が、わかっている。二人とも本当は腸が煮えくり返っているに違いないのだ。さらわれた娘たちの恋人や家族、友人たちは、今も王都で彼女たちを案じて心を痛めているのだから。かつて同じような思いを味わった彼らにしてみれば、自分の身に起こったも同然だろう。それが証拠に、アヴィンもマイルもこちらを振り返りはするものの足を緩めようとはしない。
ルティスは唇を引き結んだ。ベルトで止めていたスカートを一気に外し、いつもどおりの身軽な恰好になる。
地面を蹴って走り出せば、景色はあっという間に後ろに流れていった。二人の背中を追いかける。戦いの気配に、久方ぶりに血が騒ぎ出す。
昂揚にまかせて、走る。熱くなってきた身体には、森の冷たい空気も気にならなかった。
やけにナチュラルにべたべたしている(できる)のは演技だからです。たぶん。でも仕事を口実にべたべたできてルティスも逃げないのでちょっと嬉しいアヴィンさんまだ十代。
そしてルティスはED後数ヶ月の時点ですでにアイメルとマイルを呼び捨てにしていること希望。
何が書きたかったかというと、ルティスが書きたかっただけ。そしてなにげにお互いメロメロなアヴィン×ルティスが書きたかっただけ。
アヴィンは晩生そうなイメージもありますが、個人的には突撃は早いんじゃないかなあと思っておりますです。はい。だって非公式情報とはいえ海で結婚しちゃってるんだぜ…子どもまでいるんだぜ!(笑)
というわけでうちとこではルティスが帰ってきたときに早々勢いで告白かましてプロポーズまですませてしまっていることになっております。楽しい。楽しすぎる。
他人の恋愛事情に疎いのは、たぶん単純に興味がないのでしょう。シャノン→マイルはわかりやすすぎるので「気づいた」とはとても言えないけど、アイメルに対してさりげに点数稼ごうとする一般人お兄ちゃんとかにはきっちり気づいて威嚇してるし。あと港町の変な詩人の言動、アレは素ボケに見せかけてアイメルのときもルティスのときもしっかり妨害してるよね。うん。
つまり自分自身と本命(ルティスとアイメルとあともしかしたらマイルも)周辺の気持ちには敏いわけですね。よかったね。
この二人はEDで急接近すぎるだろという声もあるようですが、うーん、どうなんだろそこのところ。私はあまり唐突には感じなかったけど。今までそれどころじゃなかったけど、他の悩みがなくなって気持ちのベクトルが一気にそっちに向かったというか。ルカ絡みのごたごたの辺りからすでに敵ではなくなってた気がします。マイルとアイメルを奪われたときの「やっぱり信じるんじゃなかった!」って台詞も裏を返せば信じてたってことだしさ。
でヴァルクドに保護されたあたりからじわじわ来て真紅の炎あたりではもううっすら相思相愛だったんじゃないでしょか…
あそこ辺りのアヴィンとルティスって、二人とも「迷子」なんですよね。しかも「泣くもんか」って我慢してる迷子。アヴィンはまだしもガウェインじいちゃんとか頼れて感情をぶつけられる相手がいたけれど、ルティスはそうではないわけで。耐えて足掻く美少女を目の当たりにしたらそりゃまあ、健全な青少年としてはやられてしまって当然げふがふ。
互いの必死に生きる姿に、自覚なく互いに癒されていくわけですよ萌え! バカなのはわかってる私、でも燃えあがる!(大笑)
語りすぎましたすいません。このあたりにしておきます。
あ、マーティさんとミューズさんが出てきたのは、まあ出てきそうだなと思ったのもあるけど趣味です。ただの。