鉄炙る氷の華
 法衣のその奥へと、切っ先は呆気ないほどに容易く吸い込まれていった。
 急所は心得ている。心の臓をまっすぐに貫き、ひねり、抜く。
 この悪魔には最早反撃の力など残ってはいない。やりとげた確信に唇を引き結び、倒れるさまを見届けることはせず。
 背を向けてその音だけを聞いていた。



 頬に当たる海風は冴え冴えと冷えている。
 当然といえば当然だ、あたりを白く染めあげているのは目視でそうと判別できないほどに細かい、氷の粒なのだから。かつてと違うのは、今その現象を起こしているのは強要されたわけでなくおのれの意思で行っているという点だった。この身に宿る力は便利ではあるが、同時に内側をじわじわと蝕み削るものだ。心配されているのは知っていた。そもそもがはっきりと言葉にして、無茶はしないでほしいと言われていた。けれど今回ばかりは素直にうなずくわけにはいかなかった。
 悪夢を終わらせるために打てる手はすべて打っておきたかった。
 十三年間、地獄の底で足掻いた。
 落城の日の鬨の声が今も耳の奥にこだまする。

 はじまりは、フェニックスゲートがザンブレクの手に落ちたらしいという情報が入ったことからだった。その真偽すら定かにできないままに、鉄王国の軍勢が予期せぬ速さでもって城門を押し破って侵入してきた。
 もちろん城を守るための人員は残されていたけれども、突然のことに指揮系統はめちゃくちゃだ。落ち延びる間など到底あるはずがなかった。お逃げくださいと叫びながら私室に走りこんできた若い騎士を背後から斬り捨てて、血と鉄の匂いがあっという間に押し寄せる。
 扉近くにいた侍女は、髪を掴まれ引きずり倒された。悲鳴をあげ、のしかかる体を半狂乱で押し戻そうとしてもかなうわけはない。頬を張り、馬乗りになり、首に手をかけて。反射的によせと怒鳴った彼女を視界に映して、奴らは初めて気づいたとでもいうようににたりと嗤った。嫌な目だった。
 大公は戦死し、公子たちは行方知れず。大公妃の姿もなく主だった宮廷貴族たちは戦の気配にすでに去ったあとだ。
 彼女の立場は人質ではあったが、貴人として遇されたその環境自体は十分なものだった。毎日梳られて艶のある髪、荒れを知らぬ頬、磨かれた爪。びろうど張りの椅子から半ば腰を浮かし、怯えてすがりつく年かさの少女らの中心にあり、上等な絹の衣をまとっている。あとで知ったことだが、ロザリス城の宝物は大公妃によって大半がザンブレクに移動させられたあとだったらしい。ほかにめぼしいものをみつけられなかった兵たちにとり、彼女は極上の貢ぎ物足りえたのだろう。
 鉄王国の武器の扱いはロザリア騎士たちに遠く及ばなかった。技巧などないただの力任せだ、その戦いぶりは粗野極まりない。だというのにクリスタル正教とはよほどに権威があるらしい。敬虔な信徒たちはその荒々しさとはまったく裏腹に、驚くほどに統制がとれていた。彼女はその場では傷ひとつつけられることなく、捕らわれた民とともに引きずられるようにこの海を渡った。

 そう、貢ぎ物だったのだ。
 結局のところ彼女らがまがりなりにもその瞬間まで無事でいられたのは、教団へ献上するための戦の戦利品と位置づけられたからだった。結局は同じだった――ただ時と場所をたがえただけだった。祈りの儀式と称した気狂いの集まりは、思い出したくもない。
 およそ人の手でつくられたのかどうかもあやしいようなだだっ広い空間。おそらくは地中だというのに、ほの明るいのは岩があかあかと燃え流れているからか。高い柵のむこう、清浄に輝くクリスタルを臨みながら、その場所は血と鉄の匂いに満ちた戦場と変わらない。むせかえるような禍々しい空気の中、連れてこられた侍女は次々と司祭たちの毒牙にかかっていった。
 あらんかぎりに叫んでも、思いつく限りの罵倒を並べても。人の心を失った獣たちには何の痛手もない。あれらは彼女に見せつけていたのだった――お前もこれからこうなるのだと、何をどうしようとも避けられない運命なのだと嘲笑うためだけにこの光景を見せつけているのだった。
 ジルさま、ジルさまたすけて。彼女の側つきとして配されていたのはおおむねが年の近い、まだ幼さすら残る娘たちだ。泣きながら手を伸ばす顔見知りの少女に駆け寄りたくても、拘束された身ではそれすらかなわない。
 はめられた枷と鎖が派手な音をたて、手首に血が滲んだ。それでも暴れることをやめられなかった。視線で人を射殺せるのなら、司祭たちはとうに塵となり滅んでいたことだろう。けれど現実は無情だった。ことさらにゆっくりと歩んできたあの悪魔、イムランは醜悪な笑みを浮かべ彼女を見下ろしていた。食いしばる歯の隙間から、獰猛な唸りが漏れた。
 ロザリアから奪ってきた、いちばんに上等な、玩具。
 この場における彼女の役割はそれだった。
 襟元を引き裂かれ、首飾りの鎖をぐいと引かれ――ちぎれる、と思った瞬間にそれは爆発した。



 彼は当然のように手を差し伸べてきた。
 拒否すべきたぐいの気遣いではない。素直に手を借り、不安定に揺れる小舟の上から硬い地面へと降り立つ。続いて体重を感じさせない動きで同胞の狼も跳び移ってきた。
 見上げる山道は蒼く光るエーテル溜まりに沈んでいたが、ごつごつ尖った岩肌は変わらない。
 毎日のようにこの道を降り、そして登った。ドミナントの力を目覚めさせた彼女は贄ではなくなったけれど、今度は兵器としての役割を見出された。罪深き魂に、いやだからこそ救済として、崇高な使命を果たす一助を担わせてやろう。
 身勝手な理屈を並べたて奴らは、その一環として日常は彼女に島の周囲を警邏するように命じた。穢れた身では神殿に参ることがかなわない。だから代わりに信仰の証だてとして巡礼しろというのだ。鼻で笑いたくなるような建前ではあった。本音はといえば、いざ戦に駆り出したときに足が萎えて使い物にならないようでは困る。そんなところだろう。
 しかし逆らえばロザリアから連れてこられた女や子どもが目の前で鞭打たれる。従う以外の選択肢は見えなかった。
 ずっと、後悔し続けている。



 五年ぶりに相まみえた恩人は、変わらない瞳で彼女を見つめた。
 年は取った。だけど変わらない。無事を喜んでくれる言葉に嘘はなく、何故戻ってきたのだと詰る口調にも嘘はない。声を震わせながら肩をさする手のひらはあたたかい。視界に薄く張る膜を瞬きで必死に散らし、久方ぶりの温もりを享受した。
 このひととの出会いはそれこそ、闇の底で差した一筋の光のようであったのだ。

 そのとき何が起こったのか、彼女はすぐには把握できなかった。
 周囲はうだるほどの暑さだったはずだ。それが気づけば極寒の地と化している。
 思考に紗がかかったようで、細かいことまで気が回らない。鉄製の枷が限界まで冷えて、砕け散る耳障りな音を聞いた。
 理解したのは一連のことがすんで、部屋に押し込められてからだった。汚れを拭われ、毛布を巻きつけられ、手には白湯の入った椀。啜る。冷えた子どもを抱きしめるやわらかい腕を認識して初めて、あの場で何が起こったのかを思い出すことができた。
 どうやらシヴァのドミナントとしての力に目覚めたらしい。体内を駆け巡るエーテルの奔流は圧倒的で、かつ恐ろしいくらいに鮮明だった。
 捧げものとしての見目を損なわないためだったのか。捕らわれた際も奪われず身に着けていた首飾りは、力が強くなるとして先代のシヴァが愛用していたものだ。遠い地に独り向かわねばならない娘へ、せめてもお守り代わりになればと両親が持たせてくれたものだった。彼らはこのことを予測などしていなかっただろう。よすが以上の意味を含んでいたとも思えず、またこれが力の呼び水となったわけももちろんない。
 ただ、彼女はもともと“そう”だった。それだけだった。希ったわけでもない神の力は、極限まで追い詰められた恐怖と怒りで以ってかたい殻を破って溢れだした。
 そしてあの、おぞましい儀式から彼女を掬い上げた。
 自覚した瞬間を覚えている。安堵よりも血の気が引いた。
 だって、彼女だけが逃れ得たのだ。あの場にいた虜囚たちの中では、彼女ただひとりだけが難を逃れた。
 非力でも年若くとも、彼女は公女だった。北の王の娘だった。
 王は民を守らなければならない。かつての敵国といえど、ロザリアは数年を過ごした地だ。ひどいひとはたくさんいたけれど、やさしくしてくれたひとも同じくらいたくさんいた。友人とまでは言えなかっただろう。それでも日々をともに過ごし、笑顔を向けて、親身に世話をしてくれた娘たちが理不尽に蹂躙されるのを、止めることもできなかった。
 翻って己が身に危機が迫れば呆気ない。抱いていた力は容易く堰を切り、大勢の男たちを圧倒した。間に合わなかった。そのとき娘たちの多くはすでに事切れていた。
 なんて浅ましい。それでいて、役立たずなのか。羞恥でか怒りでか身体が震えた。
 青ざめた彼女に同情した女がやさしげな声で囁いて背を叩いたが、その内容はちっとも耳に入ってこなかった。
 彼女だけが逃れ得たのだ。

 毛布ごと長いこと彼女を抱きしめていた女は、マーレイと名乗った。
 ロザリス城下からやはり同じようになすすべなくかどわかされてきたのだという。ただ連れてこられた中では年かさだったために、儀式の贄――実際は玩具だ――として“使う”ことを後回しにされていた。
 聞くところによると、力に目覚め暴走しかけていた彼女は、まだ息のあった娘を盾にされ一度はおとなしくなったらしい。その隙にクリスタルの枷をはめられた。クリスタル正教ではマザークリスタルの掘削は禁忌だ。なのになぜそのようなものがあったのかといえば、他国製のものを奪ったらしいが。道理でザンブレクの刻印が為されているはずだ、そのあたりは教義に反しても目を瞑るあたりいかにも傲慢な支配層らしい。
 力で抑えつけることはかなわずとも、人質をとれば言うことをきく。早々に支配方法を見出されてしまった彼女は、鉄王国の兵器として生きることを余儀なくされた。

 彼女が獣と化しても人の心をも忘れずにいられたのは、その女のおかげだった。

 司祭たちには顔をあわせるたび穢れた獣よと罵られた。兵士は司祭ほどではなかったが、必要な時以外は触れるどころか近づくことすら嫌がった。こちらとしても望むところなので、それ自体は願ったりだったが。
 神殿に仕える従者たちは、鉄王国出身のものが半分、残りを各国からさらわれてきた奴隷たちが占める。どちらにせよ強大な力を内包する彼女は忌避の対象だった。
 そんな中、マーレイだけはいつでもどんなときでも態度を変えなかった。面識はなくとも城下にいたのだから、彼女がもともとはどういう立場にあったかも察していただろう。
 しかし、ジル、と呼び捨てにして気さくな口調で語りかける。傷をつくって戻れば嘆いて手当てしてくれたし、食欲がないときはそばで根気強く見守ってくれた。あくまで同郷の子どもの面倒を見ているだけだとの姿勢を崩さなかった。どれだけ救われたことだろう。
 罪悪感はあった。無力感は常に拭えなかった。それでも彼女は事実まだ少女だったのだ。強くあらねばならないと己を奮い立たせるにも、心の支えは必要だった。胸に灯っていた淡い想いは消えはしなかったけれど、少年の面影はすでに遠い。思い出だけを生きる糧とするには、環境が過酷に過ぎた。
 そう時をおかず、彼女は女に懐いた。そんな彼女の姿を見て、はじめはこわごわだった同胞たちの視線も軟化した。
 それがさらに都合よく利用されるための布石になろうとは、そのときは思いもしなかったのだった。

 身を寄せ合い、慰め合う相手がいたとしても。すさまじい速度で摩耗していく心身は、ダルメキアとの戦で限界を迎えていた。あのときはほんとうに消えてしまいたかった。何もかもどうでもよくなっていた。
 いやどうでもよくはない。けれど少なくとも彼女が力尽きたとて、島に残った同胞たちが無碍に殺されることはあるまい。短くはない年月で、相応に順応したものもいる。逆に彼女に対する盾として使われなくなるぶん、生き延びられる確率も上がろうというものだ。
 そのつもり、だったのに。
 死ぬつもりだった戦で反して命を拾い、それどころか何もかもが息を吹き返した。
 我ながら現金なものだ。己に危機が迫れば力に目覚め、想い人に再会すれば生きる気力が湧いた。順風満帆な日々ではなかった――たくさんの命を取りこぼした。それでも捕らわれて兵器と扱われていたころとは違った。いつのまにか、明日を楽しみに眠りにつくことができるようになっていた。
 今また、彼と名を呼び合う。狙ったわけではなかったが、マーレイがはっと息を呑んだのを彼女は見逃さなかった。その瞳に理解の色が浮かび、束の間唇がかすかに綻びかけたことも。
 そう、もう、彼女は死ぬつもりなんかさらさらない。
 戦に駆り出されるたび祈るように手を組んで見送ってくれた姿を思い出す。もう大丈夫だ。おそらく二度と会うことはないだろうけれど、もう死にたいなんて思っていないから。だから心配しないでほしい。
 あのままにならなくてよかった。ちゃんと生きている姿を見せられてよかった。
 未練がないとは言わない。だけどもう、互いに霧を掴むような不安は抱かずに済むだろう。



 そこに足を踏み入れたことがあるのは、一度だけのはずだった。
 それでも忘れられない、あの頃のままでしかない。それを砕くことを目的にやってきた自分の目には、巨大な石に真面目くさって祈りを捧げる後ろ姿は馬鹿げたものにしか映らなかった。
 大声で呼ばわれば振り向く。相も変わらず醜悪なことだ。身体の向きが変わったことで、祭壇の上に横たわる遺体がちらと見えた。唇を噛みしめる。
 信仰は人それぞれ、そのひとだけのもの。だから他人の尊ぶものを否定する気などない。マザークリスタルに対しては彼女とて、畏怖の気持ちがまったくないわけではないのだ。ただ何があろうともこの道を貫くと決めたから、恐れずいようと思っているだけで。
 純粋に祈りを捧げ、日々を清貧に誠実に生きる。奴らがそれだけの集団であったならどんなにか良かっただろう。でも実際はそうではなかった。クリスタルには本来贄など必要ないものを、ずっとずっと続けてきた。疑問を持つどころか嬉々としていた。
 常に己の優位を確信したいがために、弱いものを蹂躙する。他をひれ伏させることで満足を得て、泣き叫ぶ声に愉悦を覚える。汚らしい欲を満たすため、大切であるはずの教えを隠れ蓑にしておいて、良心の呵責に苦しむことすらない。信徒たちの中には、奴らの真の姿など知らず真摯に仕えているものだって少なくはないだろう。すべてが許せない。許せるはずがない。
 けれど彼女がいちばんに許せないのは、自分自身なのかもしれなかった。
 粗末な衣には血が滲んでいる。あの頃のように他国からさらってきた奴隷か、それとも自国の民の中から舌先三寸で身を差し出させたものか。

 従わなければ良かったのだ。ずっと後悔している。

 従ったところで、実のところいくつかの結果は変わらなかった。奴は嗤いながら彼女の目の前で、おそらくは思いつく限りの残酷な手口で少年少女たちの尊厳を奪い、命をも奪った。逆らう気概をへし折るため、従い続けさせるために、ことさらに人の傷つく場面を見せつけ続けた。動けば殺すと脅される。だけど動かなかったら動かなかったで、やっぱり殺された。
 五年。最愛の人と信頼できる同胞たちと懸命に生き抜いた日々は、彼女にかつての生気と判断力を取り戻させていた。
 なぜ自分は、動かなかったのだろう。
 今ならわかるのに。動けばよかったのだ。
 人質の首に、刃が食い込む? だからなんだ。喉を掻き切られる前に、脅迫者の腕ごと氷で覆ってしまえばいいだけだった。そうすれば軽い霜焼け程度ですんだ。クリスタルの枷があったって、それくらいのこときっと簡単にできた。
 そう、守るべき人たちを氷の壁の内側に囲い込めばそれでよかった。兵士全員は無理でも、司祭たちは少数だ。さっさと凍らせて、海にでも捨ててしまえばよかった。なぜ思いつかなかったのだろう。
 被害を出さないための行動だったはずが、奴らを増長させるだけに終わってしまった。
 ああすればよかった、こうしたならもっと。夢想するごとに悔恨は尽きず、顕現の負担だけではない、噛みしめた唇はぴりぴりと痛む。

 クリスタルのコアが砕け散る光景を見つめるのは二度目だ。前回は、五年前だった。
 無事目的のひとつを終えた安堵と、それからもうひとつ。絶望しきった表情で詰め寄ってくる大司祭に対して覚えたのは、恐怖ではない。一抹の哀れさと、それから愉悦だった。
 ざまを見ろ。
 品のない表現かもしれない。だけど嗤いだしたくなってしまう。
 これで、もう、クリスタルを口実に何かを為すことはできない。まあそもそも見逃してやる気など毛頭ない。この身はすでに血と罪科にまみれ、真っ赤に染まっている。
 なんのことはない、穢れた悪党がまたひとつ罪を重ねるだけ。
 そして、二十年近く続いた後悔に決着をつけるだけ。



 法衣のその奥へと、切っ先は呆気ないほどに容易く吸い込まれていった。
 急所は心得ている。心の臓をまっすぐに貫き、ひねり、抜く。
 この悪魔には最早反撃の力など残ってはいない。やりとげた確信に唇を引き結び、倒れるさまを見届けることはせず。
 背を向けてその音だけを聞いていた。

 目の前で命を奪ってみせた。
 だというのに彼は躊躇もなにもなくまっすぐに駆け寄って来て、ただ彼女を労わった。
 なんだか長いこと、その青い瞳を見ていなかった気がする。見つめ返せば張りつめた頬が緩んで、なにかがやわらかくほどけていくような心地がした。

 あのころにはもう戻れない。消えた命は返らない。傷は消えない。
 それでもそのとき最善だと思った道を常に選んで進んでいくのだ。
 もう二度と、後悔ばかりしないですむように。

 二人と一匹で踵を返して、揺れる階を駆け下りる。
 クリスタルの消えていく澄んだ音は、長いことあたりに響いていた。
--END.
「氷華に舞う」あたりのジルの話でしたん。タイトルはフィーリングで。意味用法考えだしたら明らかに違うやろって感じだけどなんかこれがしっくり来たんだよう。

FF16の物語って、最初から最後までクライヴが中心なんですよの。群像劇的な側面はゼロとは言わないが、あくまで枝葉でしかない。プレイヤーががっつり踏み込めるのはクライヴだけな印象がある。戦闘の仕様も関係しているのかもしれない。
そんな中、ジルは彼の人生に大きく関わってくる人物のひとりではあるんですが、彼女自身が目立つ…というか内面に踏み込んで垣間見る想像する機会はぶっちゃけ鉄王国だけよねーという。他の場面でだって見えるものはあるけど見ようとしないと見えないというか、つまり控えめ。
世界設定と時代設定的に中世ヨーロッパがモチーフで、実際の歴史よりはマシといえど女性はおとなしくつつましく一歩下がって父に兄弟に夫に仕え子を産み育てるのが役目、というのが一般的な価値観としてあるわけで、そうあるよう教育もされてるわけで。隠れ家と協力者の女性陣はあの世界においてはめちゃくちゃ規格外なんだと思う。規格外ばっかでむしろそれが普通と錯覚してしまいそうなほどだけど実はあの世界の“普通”はきっと違う。
ジルだってべつに黙ってるわけじゃないんですよね。折に触れて言いたいこと言ってるほうだと思う。それなりに我も通してる。だけど受けてきた教育だけじゃなく、立場的にも呑み込んで黙ってることいっぱいありそう。
ただまあ、クライヴだってジョシュアだって他の人たちだって、好きなこと好きなようには発言してないよね、決して。やっぱり呑み込んでることいっぱいある…表情とか見てると想像はできる。単にクライヴは主人公としてプレイヤーから諸々が見えやすいってだけのことではある。
私自身はレビューとか詳しい記事は見てなくてカプ談義とガチ勢考察しか読んでないけど、なんか批判のひとつとしてジルが空気とかクライヴについてくるだけで意思がないとか言われてるらしいと見て「そうかあ? いや全然そんなことないやろ…?」と思ったのがこれ書いたきっかけかもしれん。考え始めたら長くなってしもてん。ちなみ別に反証とかではない。
内容は完全に私の妄想と捏造です。巷でも時々話題になっとるけど、ジル、どっちかなーとはまあ…私も考えたよね。どっちであろうとジル本人に責はないしクライヴも見る目変えたりはしないのわかってるし。てかそもそも尋ねそうにもないって思ってる。お互い自己申告も…しないんじゃないかなあ…
ただもしアレがジルをどうこうしたのなら、たぶんあの場でお前も浄化してやったろうとかわざわざ口に出して当てつけるんじゃないかなって思ったんですよね。だって逃げた奴隷が戻ってきたんやで武装して。そんで傍らには親しげな男。ってなったらあの外道絶対当てつけるやろ…んで精神殺ごうとしてくるでしょ。それがただただ獣だ穢れてるだて貶めるだけだったってのがFAかなと。見下して蔑んで、でもその実怖くて、道具扱いはできてもそういう意味での手出しはもう二度とできなかったんだろうなって。
あとはジルがドミナントの力に目覚めるきっかけとして一番可能性高いのがそれこそ己の身の危険だよな…というのと。ベネディクタも襲われそうになって暴走したし、ジョシュアも自分が殺されそうになったときに顕現(おそらく初)したし。あくまでふたりは顕現かつ暴走なので、目覚め自体は穏便にいくケースが多いのかもしれんけど、うーん。それでも状況的にジルのタイミングもそこだろなって思った。あとから穏便に目覚めるとかならそれこそもっと前、ロザリス攻められた時に顕現なりなんなりしちゃいそうだし。
まあどっちにしろ全部なんとなくの妄想です。公式だってEDとかそこらへんとか明言はしないだろねえ。ただ自分考えだしたら止まらなくなったからとりあえず形にして吐き出すだけ吐き出しといた。
(2023.08.26)