新しい故郷
故郷。それは帰る場所。いつも共にありたいと思うモノ。
それはどこかの街だったり、たった一人のそばだったり……。
「ったく、こんな事で泣くなよ」
泣きやんだメルディに苦笑しつつキールは優しく髪を撫でてやる。ふわふわの髪の感触が心地よい。涙の跡がうっすらと残る頬に手をやり、キールは先程の自分の行為に今更頬を赤らめた。
そんなキールの胸に頭をすり寄せながらメルディは微笑んでいる。
「ごめんな。でもキールが歌いっぱいいっぱい好きって気持こもってた。だからメルディ。ちょっと悲しかったよ。キールがインフェリアに帰っちゃいそうで」
「インフェリアに?……馬鹿何度言わせる気だ?」
少々呆れた様子で言うキールに少しメルディが頬を膨らませて見せた。
「メルディ馬鹿じゃないよー。キールの気持わかったよ。メルディも一緒が気持。
ずっとキールと一緒がいい。でもな、歌の思いもホント」
「別に僕はインフェリアのことを考えて歌ったんじゃ」
思わずそう言ってからキールがあっと手で口を覆った。が、遅い。メルディが興味津々といった風にキールの顔を覗き込んだ。
「インフェリアじゃないか?何考えてたか?」
キールは途端に顔を真っ赤にして覗き込むメルディから視線を逸らした。
歌っていたとき思いを込めたそれ。
無邪気な笑顔に悲しそうな横顔、子供のように頬を膨らせ怒ったり、どんなに辛くても笑っていようとする切ない健気な表情、無防備な寝顔、頬を染めて照れる笑顔。
思い出し熱が耳まで伝染する。
こんな事言えるわけがない。反射的にそう、心の中で叫んだが、目の前の少女はあきらめた様子をみせずじっとこちらを見つめている。
「故郷だよ。新しい……」
「新しい?」
ややしばらくして、答えるまで離さないであろうメルディに観念して微苦笑を含んだ声でキールが言う。しかしメルディが再び首を傾げた。
(言葉なんかじゃ伝えられない)
これから自分にとって帰るべき場所、ずっと居たい処、守るべきもの。自分の腕の中にすっぽりと収まるくらい小さいのに、こっちが守りたいのに、いつも自分を勇気づけ、手を引っ張って前を歩いている。何よりも大切なもの。せめて横に並んで歩きたい。
「……教えてやるよ。全部。それがどこでどんな思いがあるのか」
そう言って微笑み、今は息が掛かる距離を縮めようと再び彼女を抱きしめた。
おまけ
「メルディ」
熱っぽく囁き、彼女の体を抱きしめようとするキール。しかし、それよりも早く青い何かが、キールとメルディの間に飛び込んだ。正確に言えばメルディの胸に。
「ククキュ!」
「クイッキーどうかしたか?」
「クキュゥ〜」
メルディの胸に甘えるように身を寄せて何かを訴えるクイッキーにメルディはふんふんと肯いた。
「そっかクイッキーは眠いか」
壁に掛かった時計を見ると十一時の数字を差していた。いつもならメルディはとっくに就寝している時間だ。
「ん〜メルディも眠いな。もう寝るよー」
「え゛っ!?いや、ちょっと」
少し考えてからキールの腕からさっと離れ、クイッキーを抱き上げたまま階段に向かおうとするメルディ。これにはキールが慌てた。抱きしめようと手を回しかけた状態で固まっていた手を意味なく振り、何とか引き留めようと言葉をかけたが、メルディはそんな彼の態度も気にもせず、にっこり微笑んで言った。
「キール、歌ありがとな。話の続きは明日聞かせてな」
「あ、あした?」
「おやすみ〜」
「おやすみ……って」
先程までの甘い雰囲気は一体どこに行ってしまったのか。唖然としているキールを後目にメルディの足音は規則正しく音を立てて離れ、やがて階上からは無情にもドアが閉まる音が響いた。
「それはないだろぅメルディ……」
あまりといえばあまりの展開にキールはソファに突っ伏した。
--END.
|| INDEX ||
クィッキーいいぃ〜〜〜〜〜〜!!!(絶叫)
ひどいわクィッキー!
読み終わってしばらく、机ばんばんたたいて悔しがってました、私。
螺旋さんいわく「オマケが本編みたい」だそうですが…くわあ!
くわあああああ!
……だめだ、壊れてます。まともなコメントができそうにありません。
ちっとはキールの気持ちも察してあげようね、メルディ。
クィッキーは…無視された逆襲なんでしょか…?
くそう。邪魔しやがって…
どちらにしてもこれ読んで悔しがった人多数なはず(笑)。
はい! 期待した人手ぇあげて。
……ああでも彼ららしいといえばらしいわ…(ほろり)
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