友への手向けM 〜希望が見える〜
惜しみなく振る月の光に照らされた二人の男女。
廊下を足早にあるく少女と追いすがる青年。
そして――
うっすらと月明かりが差し込む操舵室。
金色の髪を揺らし隣に立っていた女性が窓辺による。操舵室は船の一番高いところにあるのでそこから眼前に広がる海と甲板が見下ろせた。
そうするとそこには惜しみなく振る月の光に照らされた二人の男女が見える。少し視線を外せば甲板から船尾へ続く通路を足早に歩く少女と追いすがる青年がいる。どちらも生き生きとして見え、今にも声が耳に飛び込んできそうだ。
「仲がええのう」
「ええ、とても」
いつの間にか横に立っていたガレノスの言葉にリシテアが頷く。
「不思議ね。あの子達を見てるとなんだかとても幸せな気分になる」
「おう!」
「インフェリアンとセレスティアン。たった一年前は啀み合っていたのにこんなにも愛おしく思えるのね」
「おう」
もちろんこれがすべてではない。どちらの世界にもまだわだかまりが残っている。二千年間の時間背を向け合ってきた。その時間を比べ合うと理解に至るのはあまりに短い。短すぎるのだ。
まだまだ問題はたくさん出てくるだろう。外見、文化、気質、身分や宗教に対する考え……細かいところにまで上げればきりがない。そして何よりも今二つの世界の距離は遠すぎた。
「それでも」
「失いたくねぇ」
力強いフォッグの言葉にリシテアが微笑む。
それを力ずく押すようにガレノスが言う。
「二つの世界はもはや二つではない一つの世界なのだ。人が人を知る。それは小さな世界なのだ。途切れることもあるだろう。離れることもあるだろう。だが、望めばきっと歩みよえる。数え切れない幾つもの世界が重なりエターニアという世界を形作っているのだ。大丈夫。今そこに希望が見えるのだから」
「メルディ!いい加減機嫌直せよ。悪かって言ってるだろう」
「……メルディもう怒ってないよ」
ぶすっと頬を膨らまして、目線を合わせないでそんなことを言ってくる。怒っていることは明らかだ。そんな表情も可愛いと思うが、今はあまり嬉しくない。
「嘘つけ」
「メルディ、嘘言ってないな」
「嘘だ!」
「嘘違う!!」
――以下数分繰り返しにより省略――
「……ああ、わかったよ。だったら証拠を見せろ」
「証拠って何か?」
少しばかり据わった目のキールに言われ、きょとんとするメルディにキールはこうするんだと言い、彼女の体をぐいっとを引っ張った。
あっという間に抱き寄せられ、驚く間もなく重なった柔らかなそれにメルディは真っ赤になった。
「バイバ!」
「まだ怒ってるか?」
いたずらに成功したみたいな子供の顔でキールに覗き込まれメルディは次の瞬間、彼の耳元で叫んだ。
「怒ってるよ!キールのバカー!!」
「賑やかね」
二人きりになった操舵室で寄りそいながら、リシテアは聞こえてきた可愛らしい少女の怒鳴り声にくすくす笑みを漏らした。
「おう。だが、アレだな。来年の墓参りはもっとアレになるぜ!きっとその頃にゃあいつらもアレだからな!」
「一緒ね」
「おう!」
懐かしい仲間もきっと。
「ええ、会えるわ。リッドやファラやチャット、そして……」
微笑みながらフォッグに寄りそうリシテアは自分の腹部を優しく撫でた。
「この子にも……ね」
「おう?」
月明かりに輝く花々が揺れる。剣が月明かりに反射をして輝く。
それは彼の心のように。
――待っているよ。また会える日をいつか…………。
終――
|| BACK || INDEX ||
紫雲英の戯言。
……はい! 某サイトさんに投稿されていた螺旋さんの小説でした〜。
図々しくも転載願い出て、オッケイとのことだったのでもらってきちゃった〜。
だって、まとめ読みするのに、投稿サイトでCGI検索するのめんどいんですもの…(なんという外道か)
ええ、毎回続きが楽しみで投稿されるたびに悶えてましたのことよ(笑)。
「キールー!」とか「ロエンー!」とか絶叫しまくってたので、…隣に住んでた人は…すんまそん。
いやだってもう。細かいところいちいち突っ込んで感想書くとものすごい量になりそうなので
ここでは控えておきます(笑)。
とにかく好きということでv
ありがとうございます〜vv
|