けっこう珍しいのではないかと思える(笑)マグアメ的会話集。

マグアメじゃないのに個人的にウケた会話とか余計なモノもときどき入ってます。
何周かやってデータ集めたので、護衛獣はそのときによってバラバラ。
句読点はある程度忠実に打ってありますが、読みやすいように(自然に見えるように)適当な箇所に入れたりもしました。
誤字脱字、フォント色など、間違いがあったらツッコミよろしくお願いします。


マグナ→■ アメル→■ ネスティ→■ そのほかの人→■

第2話
レルムの村
「うーん、知らないうちに森の中に入っちゃったみたいだな。でも……なんていうか、すごく静かでいいところだな。ふわあ……なんか眠くなってきちゃったぞ。ちょっと昼寝でもしていこうかな」
(……。……ん?)
「あわ、あわあわっ! きゃあああっ!?」
「な、なんだぁ!?」
「ど、ど、どいてくださあ〜〜いっ!?」
「なんだァ!?」
「あわわわっ!? うわあっ!(なんでいきなり、木の上から女の子が降ってくるんだ???)」
「いたた……」
「(まあ、うまく受け止められたからよかったんだけど……)大丈夫かい?」
「あ、はい大丈夫ですけど……貴方のほうこそ平気ですか?」
「ああ、平気さ。さすがにびっくりしたけどね」
「ごめんなさい。うっかり足を滑らせちゃったんです」
「それはいいけどさ。どうして、木になんか登ってたの?」
「それは……」
(あれ、あんなとこに子猫がいるぞ?)
「あの子、あそこから下りられなくなってるみたいなんです」
「なるほどね。でも、その格好で木に登るのは、ちょっと無茶じゃないかな」
「あ……はい……」
「ちょっと待ってなよ。よっ、と……」
フーッ!
「おいおい、暴れるなよ。俺はお前を助け……」
フギャアアアッ!!
「うわあぁっ!!」
ドサッ
「だ、大丈夫ですか!?」
「いたたた……」
「あの子、しっかり自分で下りられたみたいですね……」
「そだね……あいたたっ!」
「あ、じっとしてて! そのまま……」
(あれ?)
「痛くないから……ほら、痛くない……」
(なんだろう、痛みが引いていく……)
「ふう……もう、動いてもいいですよ?」
「君が治してくれたの?」
「ええ、あたしの勘違いのせいで、貴方に迷惑かけちゃったんですし」
「アメルさまぁ〜! どこにいらっしゃるんですか〜!?」
「あれ、もう休憩の時間終わっちゃったのかな」
「アメルさま〜っ!!」
「は〜い! それじゃ、あたし行きますね?」
「あ……(ひょっとして……あの子……)」
「あ、それから……」
「うわ!?」
「マグナさんはいらない人なんかじゃありませんよ」
「え?」
「もっと自信を持ってくださいね?」
「(……)なあ、バルレル。俺、あの女の子に名前教えてないよな?」
「そういや、そうだな」
「だよな? もしかして……(あのアメルって女の子が、聖女なのか!?)」

レルム村・夜
「なんだっ!?」
「なんだ……どうして村が燃えているんだ!?」
「ただの火事じゃないぜ。見ろ!」
「た、助けてくれえっ!」
「……」
「ぎゃああっ!!」
「なによ、あいつら無抵抗の人たち相手になんてことをしてるのよ!?」
「おうおう、こりゃあまさに問答無用ってヤツだなぁ……」
「野党か? いや、それにしては、動きが整然としすぎてる……」
「冷静に分析してる場合じゃないだろ、ネス! ……? アグラじいさんは!?」
「家ん中にはいねーぞ」
(きっとアメルのところに行ったんだ……)
「マグナ!?」
「放っておいたらみんな殺される!!」
ゴゴオ…パチパチ
「ひどい……。貴方がたは、どうしてこんなひどいことをするんですかっ!?」
「……。……お前が聖女か?」
「質問に答えてっ!」
「……連行しろ!」
「いやぁ!!」
キンッ!
「……うがっ!?」

「大丈夫か、アメル!?」
「マグナ……さん……」
「女の子を力づくでどうこうしようって根性、気にいらねえなぁ」
「どういうつもりか知らないけど、この子は渡さないんだから!」
「……」
「だんまりかよ? ますます気にいらねえ連中だな……」

「俺たちから離れないで」
「は、はいっ!」

「いったいなんなんだ、この連中は!?」
「わからん……だが、そこの彼女を狙っていることだけは間違いないようだ」
「アメル、無事か!?」

「リューグ……」
「お前たちが、この連中からアメルを守ってくれたのか?」
「まあ、一応はな」
「そうか……」

「ねえ、リューグ。村の人たちは、みんなはどこにいるの? みんな、ちゃんと逃げられたんでしょう? そうなんだよねっ!?」
「……」
「うそ……」
「あいつら、一人残らず殺しやがった。女も、子供も、病人でさえもッ!」
(なんてことを……)
「ほう、こんなところに隠れていたのか」
「……!!」
「ずいぶん手間がかかるとは思ったが、まさか冒険者ごときに遅れをとっていたとはな」
(漆黒の仮面。こいつが親玉なのか?)
「無駄な抵抗はよせ。抵抗しなければ、苦痛を感じる間もなく全てを終わらせてやろう」
「ふ……ふざけんじゃねぇ!!」
「……」
「ぐああぁっ!」

「リューグ!?」
「なんて野郎だ……片手で、あの小僧の斧をはじきやがった!」
(なにをしたのか全然見えなかった……!)
「くそぉ……ッ」
「我々を邪魔する者には等しく死の制裁が与えられる。例外は、ない」
「うおおォォ〜ッ!!」
「なに!?」
「アグラじいさんっ!」
「無茶だ!?」
「わしの家族を殺されてたまるものか……命の重みを知らぬ輩に好きにさせてたまるものかァァァァッ!!」
「ぬう……!」
「みなさん、早く逃げてください!」

「ロッカ!?」
「あいつは僕たちがここで食い止めます。ですから……。アメルを! その子を連れて逃げてください!!」
「あたしはいやですっ! おじいさんたちを置いて逃げるなんてできません!!」
「聞き分けのないこと言わないで! 貴女が逃げなくちゃ、あの人たちのしたこと全部が無駄になるってわからないの!?」
「大丈夫だよ、アメル。ちょっとお別れするだけだから。必ず迎えに行くから先に行っててくれ」
「……こっちだ!」

「さあ、アメル!」
「……行けえぇっ!!」
「ロッカ! リューグ! おじいさぁぁん!!」

モノローグ
走って、走って、走りつづけた
理不尽な怒りを、やりきれない気持ちを必死に振り払うようにして
どこをどう走ったのか
追っ手の影を振り切ったと確信できたときには
俺たちはもう、その場から動けぬほど疲労していた
襲撃者におびえながら初めて過ごす夜
闇の中に身をひそめながら俺は眠ることもできず、沈んでいく月をただ無言で見つめていた

夜会話
「どうして……こんなことに……」
「今はなにも考えちゃいけないよ、アメル。疲れた身体で考えても、よくないことしか浮かばないから」
「でも……っ」
「不安なのはわかる。でも、俺たちはロッカたちと約束したんだ。君を守るって……。リューグやじいさんはそのためにあの場に残ってくれた。……信じよう? 「迎えに行く」って言葉を。そして、信じてくれ。俺たちが味方だってことを……」
「……うん」
――守らなくちゃこの子を……じいさんたちとの約束を……
第3話
フォルテと
「あれ、フォルテどこかに出かけるの?」
「おお、ちょっとそこらへんをぶらぶらしてくるわ。ほれ、前に来たときはあいつの治療費稼ぎで頭がいっぱいでな。ろくに観光してねーんだよ、これがな」
「あ、でもそれならケイナさんと一緒に行けば…」
「わかってねーなあマグナ。オトコの観光ってのはオトナの観光だぜ。意味、わかるか?」
「…なんとなく」
「さいわい、あいつはミモザのねーちゃんとおしゃべりに夢中だ。絶好の機会だろぉ?」
(同意を求められてもなあ…)
「ま、おまえもそのうち連れてってやるからよ。期待してな?」
「は、はあ…」
「そのうちじゃなくて、今、つれてけよ?」
「こら、バルレル。おまえはそういうコトしていい年齢じゃないだろ!?」
「ケッ! ニンゲンの基準で考えるんじゃねえよ? こう見えてもな、オレはテメエの何十倍も長く生きてんだ」
「えっ!?」
「へえ…」
「酒ってのは、サプレスにはねェからな。ずいぶん久しぶりだぜヒヒヒ…。ってわけだからよ。さあ、つれてけ!!」
「…却下」
「!?」
「お子さま連れじゃあキレイなおねーさんといちゃいちゃできん。だから、却下」
「だからッ、オレはガキじゃ…」
「年じゃなくてみ・た・め! そんじゃーなっ♪」
「テメェッ! まちやがれぇぇ!!」

「あきらめるんだな? バルレル」
「ちくしょー…オレにも酒を飲ませやがれぇぇぇ!!」

ギブソンミモザ邸
「(元気なかったよなアメル……)無理もないか。あれだけのことがあったんだから(ちょっと、様子を見てこようかな?)」
→アメルの部屋へ
「入るよ、アメル」
「あ……マグナさん。あたしに、なにかご用ですか?」
「いや、たいしたことじゃないんだけどさ。元気なさそうだったから、ちょっと様子を見にきたんだよ」
「え? そんなことないですよ。ほらっ、ぜんぜん元気ですよ♪」
「……」
「あはは、あたしちょっと用事を思い出したので。じゃあ、またあとで!」
「あ……(どう見ても、無理して笑ってたよな。今のは。気をつかわなくたっていいのに……)」

ハルシェ湖畔
「用事はすんだのかい?」
「あ…」
「無理に笑おうとしなくたっていいんだよ。君が一番不安だってことは、みんな、よくわかってるんだから」
「……」
「アグラじいさんたちのことが心配なんだろ?」
「それも、あります。だけど、あたしが一番心配なのは別のことなんです」
「別のこと?」
「あの黒い兵士たちはあたしを連れ去ろうとしてやってきました。村に火を放って、大勢の人を殺して… あたしを連れて行くためだけに、あんなひどいことをしたんです!」
「……」
「なのに、あたしはこうしてここにいる。あたしのせいでみんなひどい目にあったのにあたしは…」
→君のせいじゃない
「君のせいじゃない。悪いのはあいつらだよ」
「でも!」
「君を連れ去るだけなら他にもやり方はあったはずだよ。だけど、あいつらはわざわざあんな手段を選んだんだ…。君のせいじゃないよ。君がどう思っているのかはわからないけど、俺は君を助けたことを後悔なんかしてない。ネスやみんなも、多分同じ気持ちのはずだ。君のことは、俺たちが守ってみせる。だから負けちゃダメだあんな奴らに!」
「マグナさん…」
「さあ、帰ろう?」
「…は、はいっ」

→俺たちが心配なの?
「……」
「俺たちを、これ以上巻き込みたくないって思ってるんだね」
「あたしの…あたしのせいで迷惑をかけたくないんです! あたしをかばって誰かが傷つくのはもういや…! それぐらいなら…」
「あいつらの所に行くなんて言わせないぜ」
「…!」
「わかってるはずだよね。そんなことをしたら君を逃がしてくれたじいさんたちの気持ちが無駄になるって」
「わかってます。でも…あたし、つらい…つらいんです。なにもできない自分がつらいんです…」
「君がどう思っているのかはわからないけど、俺は君を助けたことを後悔なんかしてない。ネスやみんなも、多分同じ気持ちのはずだ。君のことは、俺たちが守ってみせる。だから負けちゃダメだあんな奴らに!」
「マグナさん…」
「さあ、帰ろう?」
「…は、はいっ」

モノローグ
止めることはできなかった
去っていく彼の背中にはそれをはっきりと拒むだけの決意があったから
道はひとつではない
幾重にも分岐し、複雑に絡み合うその中を
迷いながら俺たちは進んでいかなくてはならない
それが本当に正しいのか誰にも知ることは出来ない
それでも俺は信じたい
彼の選んだ道と俺たちの選んだ道がいつかどこかで再び重なり合うことを
たどり着くその先に望んだ結末があることを

夜会話
「……」
「元気を出せよ、アメル。こうなったのは君のせいじゃない。二人には、二人なりの考えがあって、それで別行動をとっただけさ」
「それでも、やっぱりさみしいですよ…」
「……」
「ロッカもリューグも昔からよく言い争っていたけれど、こんなことがなければ別々に行動したりはしなかったと思います。私のせいだ、って思うのが間違いなのはわかってます。でも…」
「アメル…」
「帰ってきてほしい。それが無理ならせめて無事でいてほしいです。無事で…」
――アメルの心配ちゃんと伝わってるはずだよな…ロッカ?(リューグ?)
第4話
冒頭
「あれ、なんか今朝はいつもより料理が豪勢じゃないか?」
「起きてくるなり挨拶も抜きでそれか。まったく…」
「あはは、ゴメン。あんまり美味しそうな匂いがしたからさあ」
「うまそうな匂いさせてんじゃねぇか?」
「だよな? バルレル」
「早く食わせろって」
「なんだかんだ言っても似たもの同士だな」
「う…」
「結構なことじゃないか 起きてすぐ空腹を感じるのは健康な証拠だよ」
「へへへ。スープにサラダ…おっ、揚げ物まである。でも、朝からこんなに凝った料理をいったい誰が?」
「野菜の皮も剥けない誰かさんの作品でないことは間違いないな。うん、うん…」
「お黙んなさい」
「ほぶっ!?」
「ミモザ先輩ですか?」
「んー、そう言って自慢したいんだけどなー。私じゃないのよねぇ」

「お待たせしました。パン、焼きあがったんで、どうぞ召し上がってください」
「え…アメル?」
「あ、マグナさん。おはようございます。さあ、座って。冷めないうちにどうぞ」
「あ、うん…」
「謎はとけたかな? マグナ」
「じゃ、これ、全部アメルが作った料理なの!?」
「感心してねえで食うぞ。冷めちまうだろうが。アメルの手料理なんてずいぶんと久しぶりなんだからな…」
「あ、うん」
「台所に立つのって久しぶりだから、つい張り切りすぎちゃって。ちょっと多すぎたかな」
「問題ないなーい。こんだけうまけりゃオレはもう、どしどし食っちまうぜぇ!」
「んもう、フォルテ! 食べるかしゃべるかどっちかになさいよ」
「ほう、このパン不思議な歯触りだね」

おイモの粉を混ぜているんです。村の畑でも作れる数少ないお野菜でしたから」
「生活の知恵だな」
(そういえば他の料理にも、どこかしらにイモが使ってあるような…?)
「あの…マグナさん。お口にあいませんでしたか?」
「あったかい味だね」
「え?」
「いや、俺ってさ。こういう家庭料理ってほとんど、食べたことないからさ… なんか、うれしくて」
「…」
「ははは、あのさスープのおかわりくれるかなぁ?」
「…あ、はい! よそってきますね」
「大盛りで頼むよ」
「…はい」

屋敷入り口
「あ、マグナさん街まで出かけるんですか?」
「うん、ちょっとあちこち回ってみようかなって…」
「あのう、でしたら、あたしもついていっちゃいけませんか? お屋敷から出歩くのが危ないってことはわかってるんですけどその… あたし、村の外に出たことがないからどうしても興味がわいてしまって。マグナさんと一緒なら、大丈夫かなって…」
(そういえば、アメルは聖女って呼ばれるようになってからは村の中でさえ、自由に歩けなくなってたんだっけ… なんか、似てるよな俺と…)
「あの、やっぱりご迷惑ですか?」
「ううん、ぜんぜんそんなことないって! 一緒においでよ」
「はいっ!」

蒼の派閥前
「ほら、あれが蒼の派閥の本部だよ」
「マグナさんとネスティさん(おふたり)はあそこで暮らしてたんですね」
「でも、なんでまた俺たちの暮らしていた場所なんか見たいって思ったの?」
「えへへ… 懐かしい感じがしたからですよ」
「懐かしい?」
「お二人にお会いした時なんだか、不思議な感じがしたんです。胸の奥がじわぁって熱くなるみたいな」
「え…?」
「ずっと不思議だったけど、ここに来てわかった気がします。森ですよ。お二人も、森に見守られて暮らしてたんですね」
「まあ、確かに本部の周りはたくさん木が生えてるけど」
「私も同じです。あの村の森に見守られて育ってきたから。だから多分、お二人を身近に感じるんだと思います」
「森ねえ…」

モノローグ
それにしても今日は本当にいろいろなことがあったと思う
知らない人とたくさん出会い
同時に、知っている人たちの知らなかった一面を見ることが出来た気がする
充実してるっていうのはこういうことかも知れない
中でもミニスとの出会いは俺に少なからず驚きを与えてくれた
泣き虫だけど一生懸命な小さな召喚師
そんな彼女のひたむきな姿はちょっとだけ俺の負けん気を刺激してくれたのかも知れない
負けられないよな? 同じ、新米召喚師としてさ

夜会話
「今日のアメルを見ててなんか、俺びっくりしちゃったよ」
「びっくりですか?」
「うん、驚いた。おとなしそうに見えて意外と行動力あるし。言いたいことがあればちゃんと口に出して言っちゃうしさ」
「ふふふっ、でもマグナさんは知らなかっただけであたしの性格ってもともと、あんな感じなんですよ?」
「えっ!?」
「聖女さまって呼ばれるようになってからは、それらしくしようってちょっとだけ…ネコ、かぶってたの。幻滅しちゃいました?」
「そ、そんなことないよ。あはは…っ」
「村が襲われてからずっとあたし暗い顔ばかりしていて。マグナさんたちに心配かけっ放しでしたよね? でも、いつまでも落ちこんでたらダメだって思ったんです。だから…」
「いいんじゃないかな前向きでさ。すくなくとも、俺は今日一日で、アメルの色んな一面が見られて楽しかったよ」
「あ……」
――びっくりしたのだってうれしい驚きって感じだったもんな…
第5話
ピクニック
「はあ〜っ。本当にこうしていると狙われているのが嘘みたいだなあ。みんなも思い思いに羽根をのばしているみたいだし…俺はどうしようかなあ。
→のんびり昼寝する
やっぱ、こういう場所ですることっていえば昼寝だよなあ。あそこの岩なんか日当たりもよくて気持ちよさそうだし。それじゃ…おやすみなさぁい。
……。
(…ん? なんだか…いきぐるし…)」
「くすくすっ」
「っは!?」
「ああ、やっと起きてくれましたね」
「…ひゃメル?」
「何度もおこしたのにちっとも目を覚ましてくれないからこうして、お鼻をつまんでみました」
「あ、あのね…」
「いけませんよ? 食べてすぐ寝ると身体によくないです。それに、せっかくこんなきれいな景色の場所に来たんです。お昼寝ばかりしていたらもったいないですよ」
「それもそうだね。ん〜っ…!」
「でも、本当にマグナさんってお昼寝が好きですよね。最初に出会ったときも眠ってたし」
「あはははそうだったよな」
「でもあの時に、貴方と出会ってなかったらこうしてあたしは無事でいられなかったんですよね。マグナさんたちにはほんとうに感謝しています…」
「感謝だなんて、俺は別に、当たり前のことをしただけだよ」
「いいえ、ちっとも当たり前じゃないです。普通の人だったら危険なことには関わりたくないって考えるはずなのに貴方たちは違った。無関係なはずのあたしたちを助けて、ずっと守ってくれました。たくさん迷惑をかけてしまってるのに…」
「そんな!」
「今のままじゃダメだと思っています。マグナさんたちの優しさに甘えているだけじゃダメなんです、でも…あたし、勇気が足りない…貴方たちの側から離れることがこわいんです! いつまでもこうしていたい。マグナさんたち(あなたたち)と一緒にいたい」
「アメル…」
「身勝手すぎますよね。自分の気持ちばかり大事にして…あたし、聖女失格です。ちっとも優しくない」
「そんなことないよ! だって……。……伏せて!」
「きゃああああっ!?」
「…回避シタカ。威嚇ダッタトハイエヨイ反応ダ…」
「やっぱ、出てきたかよ黒の機械兵士…!」
「ナニやってんだよ!? ニンゲンっ!」
「みんな!?」
「このまま王都の中に立てこもられたら面倒だったんだがね。わざわざ捕まりに出てきてくれるとは…正直、助かったよ」
「都合のいい御託を並べてんじゃねえ!!」
「所詮ハ素人ノ集団カ。コウナルコトハ予測デキタロウニ…」
「そうね。まさにそのとおりよね」
「ああ、こうでなくちゃ遠出してきた意味がねえ」

「えっ?」
「手詰まりだったのはね、お互い様ってことよ」
「エサをちらつかせれば飢えきった獣は、確実に食いついてくる。あのねーちゃん、たぶんそこまで計算してたんだろうな」
「そういうことか!?」
「策にはめたつもりか? 小賢しい! 我らと貴様らの戦力差を考えれば、自殺行為にしか過ぎないぞ!」
「そのあたりはまあ気合でおぎなうさ」
「総員! 全力でかかれ!」
「上等だっ! 受けて立つぜ!」
「マグナ。あのイオスって小僧を絶対に逃がすなよ? あいつをふん捕まえれば、こいつらの正体がわかるはずだ!」

「わかった!」


モノローグ
よどんでいた混迷の霧が晴れていく
けれど…
その向こうに待っていたのは太陽ではなく
不吉な嵐の到来を告げる漆黒の雷雲だった
崖上都市デグレア
旧王国最大の軍事都市が差し向けてきた特務部隊「黒の旅団」
やっと知り得た敵の名はあまりに巨大すぎて
恐怖よりも、不安よりも先に俺はただ愕然とする
どれだけのことができるのか? してやれるのか?
考えるほどに非力な自分を必死に奮い立たせながら
俺は、俺が立ち向かうべき敵の姿を、しっかりと目に焼きつけていた


夜会話
「どうしてあの時、彼はそのままあたしたちを攻撃してこなかったんでしょうか?」
「ミモザ先輩が言ってたよね? もし、あの場で戦いを仕掛けたら蒼の派閥への敵対行為とみなされてしまう。だから、手を出せなかったんだよ」
「でも、おかしいですよ。あの人たちは平気で村ひとつを焼き払える力があるんですよ? あの場であたしたち全員を殺すことぐらいできたはずです! そうすれば…派閥に見つかる前に目的を果たすことができたはず…」
「……」
「あたし、なんだかわからなくなってます。厳しい言い方でしたがあの人は、部下たちの身を案じていました。そんな優しさをもっている人が、レルムの村を平然と焼き払ったなんて…。どうして、そんなことができてしまうんでしょうか!? あたしには…わかりません…」
「アメル…」
――黒騎士を動かしてるものって、いったいどんな感情なんだろう?
第6話
二階テラスにて
「さっき、ギブソン先輩と話をして、教わったことがあるんだ」
「……」
「悔いの残らない答えがその人にとっての真実なんだって。俺もそうだと思う。理屈にあった正しい選択をしたとしてもそれが自分の気持ちと一致してなければ絶対に後悔すると思う。だから……アメルの今の気持ちを教えて欲しい」
「あたしの、気持ち?」
「君が望んでいることや譲れないと思うもの、望まないことや不安に感じているもの。それを知りたいんだ」
「同じ質問を…させてくれませんか? あたしも知りたいです。貴方の…マグナさんが望んでいることを」
「俺は…
君を守ってあげたい、
そう思ってる」
「どうして?」
「それは…。うまく言葉にはできない。だけど、同情や哀れみとは違う気がする。ただ…」
「ただ?」
「君と出会った時から俺は感じていたんだ。なんだか懐かしくて不思議な気持ちを。錯覚かもしれない。けど、君の側にいると心があたたかくなる。安心できるんだ。だから、君を守りたい。アメルの側にいたい。それが俺の、正直な今の気持ちだよ」
「マグナさん…。あたしはずっと、自分のせいで他の人に迷惑をかけたくないって思ってました。自分が我慢してすむのなら、そうしようっていつも考えて…今までずっとそうしてきました」
「アメルは、優しいから」
「違うのっ!! 優しくなんか…っ あたしは、こわかっただけなんです! 思ったことを口にして嫌われてしまうことがこわかっただけ…。本当は聖女になんてなりたくなかった! 奇跡の力なんて欲しくなかった! でも…村の人たちの期待を裏切れなかった…」
「アメル…」
「あたしは今まで自分に嘘ばかりついてきました。でも…あなたたちと暮らすようになって少しずつわかってきたんです。自分の気持ちを正直に言うのはこわいけど必要なことなんだって。嫌われたり、迷惑をかけることになってもそれでも必要なことなんだって! だって…そうじゃなきゃ、一人でいるのと変わらない」
「うん、そうだね。俺もそう思う。君が他のみんなに迷惑をかけたくないって思うのと同じくらいに俺たちはみんな君だけをつらい目にはあわせたくないから」
「あたしは…あたしは、マグナさん(あなたたち)と一緒にいたいですっ! みんなと一緒がいい、絶対に離ればなれになんかなりたくない! だから…だから、あたし…」
「…わかったよ。アメルの気持ち、俺、ちゃんとわかったから。だからもう一人で全部背負わないで。俺が…ううん、俺たちが一緒に支えてあげるから…」
「う、うん…っ」


モノローグ
どうにか逃げのびた俺たちがたどりついた場所は、潮風の吹き抜ける浜辺だった
知らず知らず、俺たちは目的地とは反対の方向へと進んでいたらしい
だが、歩を返すだけの気力は今の俺たちに残ってなかった
砂浜に下りた俺たちは岩陰に隠れるようにして火をおこし、疲れた身体をを休める
街の灯りを見つめながら
海運と交易の都市ファナン
それは奇しくも、俺とネスが最初に目指した街だった



夜会話
「踏み出したんですよね、あたしたち…周りに流されないよう、今いる場所を守ることだけの毎日から、自分たちの意思ではじめて一歩、前に進み出したんですよね?」
「ああ、そうだよ。そしてそのきっかけを作ったのは、君さ」
「正直、まだこわいですあたし…自分の判断が本当に正しかったのかどうか不安になります」
「誰だって、それは同じだよ。未来を見ることなんて誰にもできないんだ。だから、人は悩んだり失敗もする。けどさ…それを恐れていたらいつまでたっても人は同じ場所にしかいられなくなっちまう。ギブソン先輩が言っていたよ。自分の気持ちに正直になって決めたことがその人にとっての真実になるんだって」
「自分の、気持ち…」
「こわいかもしれない。不安かもしれない。だけど、アメルは後悔はしていないんだろう?」
「してません!」
「うん、俺も同じだ。後悔はしちゃいない。どれだけ失敗しても、その気持ちを忘れさえしなければきっと乗り越えていけるって俺は思うよ」
――誰だって、きっとそうやって生きていくものなんだから…

|| INDEX || 7話〜17話 || 18話〜ED ||