マグアメ的会話+他その3。

マグナ→■ 
アメル→■ ネスティ→■ そのほかの人→■

第18話
調理場
「うわ! こんな大きなお釜で、いったい何を作ってるんだ?」
「カイナさんの提案でお弁当をつくっているんですよ」
「腹が減っては戦はできないと申しますし。持ち運びやすいおにぎりをみなさんに持っていってもらおうと思いまして…」
「おにぎり?」
「ほら、こうやって真ん中に具を入れて…ぎゅっ、ぎゅってするんだよ」
「だから、おにぎりってシルターンでは言うんですって」
「へえ…」
「簡単ですが、手軽にお腹がふくれるんです。ためしに、ひとつ召し上がってみたらいかがですか?」
「じゃあ…(→アメルのおにぎり) いっただっきまーす!」
「どうですか?」
「うん、おいしいよ。だけどさ…おにぎりの中の具までおいもなんだね?」
「ええ、当然です♪ だって、栄養たっぷりなんですから」
(こりゃ、確かにすぐおなかがふくれそうだなあ…)

夜会話
「ルヴァイドのこと、アメルはどう思う?」
「あたしには、騎士のありかたなんてものはわからないです。でも…あの人が、どこか無理をしているということは感じ取れました」
「うん、俺もそう感じた。黒騎士は、自分の心を無理に殺そうとしてたような気がする…(反逆者の汚名っていったい、なんのことなんだろう?)」
「でも、思うんです。あの人は、ちゃんとあたしたちの言葉をうけとめてくれた。だから、きっと戦う以外の方法でわかりあえるはずです。あの人の心をしばりつけているものさえ、絶ち切ることができれば…きっと…」
――そうだな…それさえわかればきっと…!
第19話
夜会話
「それじゃあ、あの方が言っていた反逆者の汚名っていうのは…?」
「キュラーたちがでっちあげた濡れ衣ってことだよ。鷲翼将軍レディウスはたった一人で祖国を覆い尽くそうとする闇と戦っていたんだ。普通の人にはできることじゃないと思うよ」
「ルヴァイドさんはそんなお父さんの本当の姿を、知らされずにいたんですね。可哀想です…お二人とも…。お二人だけじゃない、他のデグレアの兵士の皆さんだってさまざまな思いとともにこの戦いに参加してるはずなのに。それを自分たちのいいように利用しようだなんて…」
「だから、俺、ルヴァイドたちに全部話そうと思ってる」
「マグナ、それじゃ…?」
「ああ、こんな戦いに意味なんてないからね。やめるように説得したいと思ってる。黒騎士たちが、俺の言葉を信じてくれるかどうかはわからないけれど…」
「だいじょうぶですよ! あなたの言葉ならきっとあの人たちにも届いてくれるはずです。だって、あなたの優しいその言葉は、今までたくさんの人たちを救ってるんですもの」
「アメル…」
「あたしが保証しますよ。だって、あたしは他の誰よりも…マグナ、あなたのその優しさに救われてるんですもの」
「ありがとう、アメル」
――君にそう言われるとなんだか、自信がわいてくるよ…
第20話
街道にて
「あの…マグナ」
「ん?」
「あたし…重くないですか?」
「そんなことないよ」
「あたし…ちゃんと、お役にたてましたか…?」
「ああ、アメルはがんばってくれたよ。だから、今はゆっくりすればいいんだ。俺がちゃんと、家までおぶっていってあげるから…な?」
「うん…」
主人公がトリスだと背負うのはネス…何故に?(いやフォルテとかのが適役なんじゃとか考えると)

夜会話
「ガレアノたちはやっぱり、レイムさんの命令で動いていたんですね…しかも、その正体が悪魔だったなんて」
「ギブソン先輩の話だと、人間に取り憑いた悪魔っていうのはそう簡単に見分けることができないらしい。気づかなかったのも無理はないよ」
「ええ…」
「だけど、これでもうはっきりとわかってしまったよな。デグレアに関する一連の事件は、あの人の手で引き起こされたんだ」
「あたし…信じられません…信じなくちゃいけない、そうわかってるのに信じたくない…っ」
「アメル…」
「こわいんです! あの人のことが…わからなくて…どうして、どうしてあんなひどいことして笑っていられるの!? マグナあたし、わからない? わからないよぉ…」
「泣かないでアメル。俺だってわからないよ。どうしてあの人がこんなおそろしいことをしているかなんてわからないし…こわいよ…」
「マグナ…」
「でもねアメル、俺たちは知ってるんだ。あの人のしたことがどれだけの人たちを傷つけたかってことを」
「……!」
「だから、俺…あの人を止めてみせる。どんな結果になるのかはわからないけど、でもほっとくわけにはいかないから!」
「そう、ですよね…あたしたちが止めてあげなくちゃいけないんですよね」
「うん…」
「ごめんなさい泣いたりして…だけど、これでもう最後にしますから。約束しますから。だから…」
「アメル…!?」
「今だけ、こうさせてください…マグナ。弱虫のあたしにあなたの勇気をわけてください…」
「…… うん……」
――終わらせてみせるよ。君がもう、泣かなくてすむように…
第21話
夜会話
「ねえ、マグナ。あたしってバカな女の子ですか?」
「え!?」
「だって、ほら…天使だったくせにレイムさんの正体に気づかなかったし。ロッカたちによく言われてたんです。アメルは、人のこと信じすぎるって」
(それは、バカはバカでも、バカ正直っていうんじゃ…)
「困りますよね。これじゃ。これから戦う相手は人をだますことが得意な悪魔なのに…なおさなくちゃ、いけないですよね!?」
「(アメル…)そのままでいいよ、アメル?」
「でも…」
「人を疑うことなんて無理に覚えるようなことじゃないんだ。確かに、それで傷つくこともあるかもしれないけど。できるなら、俺はアメルには今のままでいてほしいんだ」
「マグナ…」
「それにほらよく言うだろう? バカな子ほどかわいい…ってさ?」
「む…それって、なんだかあんまりほめてない気がするんですけど?」
「……バレた?」
「もぉーっ! マグナっ!?」
「わ、わっ!? ちょっと、なにもそんなにポカポカなぐらなくたって…」
「バカ、バカ、バカっ! あはっあははははっ♪」
――ま、これで笑ってくれるんならいいよな…?
第22話
2階テラスにて
「メルギトスがあのとき俺に言っていたのはこのことだったんだな。フリップさまのことで結局、あれ以上の話はできなかったけど。はあ…なんか、やりきれない気分だよなあ。ん? あそこにいるのは…アメル?」
「マグナ…」
「考えごとをしていたみたいだけど。やっぱり、総帥から聞いた話のことか?」
「はい…マグナあなたは、総帥さんのお話を聞いて、どう思ってるんですか?」
「よくわかんないんだよ、正直なところ。理屈ではわかるんだ。召喚師たちが、必死に事実を隠そうと考えた事情はさ。魔力を奪われたのもしでかしたことを考えたら、当然だって気もするし…。だけど、なんていうかすっきりしないんだ」
「そうですか…」
「アメルはどうなんだい。天使の呪いだなんてデタラメを言われてさ、不愉快に思ってない?」
「あたしは、むしろホッとしちゃいました。あなたたちは苦しむ原因を作ったのが、過去の自分じゃないってわかったから」
「そっか…」
「こんなことを言ったら叱られちゃうかもしれませんけど…あたしは、そのことを隠しつづけなければならなかった人たちのほうが本当はずっと苦しんでいたんじゃないかって思うんです」
「え?」
「だって…! いくら上手にウソを重ねて周りの人をごまかしたって自分自身はだませない。後ろめたい気持ちはずっと自分の中に残ってしまう。ずっとずっと、ごまかしつづけるたびに自分の心に、負い目という傷がついていく。それって、なにより悲しいことだってあたしは思うから」
「アメル…」
「ごめんなさい。あなたやネスティさんたちにしてみれば、もっと深刻なことなのに。あたし…」
「いや、いいんだよ。きっと、アメルの言うとおりなんだと思う。だまされたほうもだますほうも、互いに傷つけあってしまう。これって、そういうことなんだよきっと…」

夜会話
「フリップさま意識を取り戻したみたいだよ」
「よかった…」
「でも、どうしてアメルが助けたこと隠しちゃうんだよ? ふらふらになるまで癒しの力を使ったのにどうして…」
「あの人のためにはそれが一番だからです。それに、あたしが好きでやったことだし」
「なあ、アメル…君はどうしてそんなに優しいんだ? 聖女だから? それとも、天使の生まれ変わりだから?」
「ううん…マグナ。あたしはただ、自分のもらったものをわけているだけです。周りの人たちがあたしにくれる優しさ。それがあったかくてとてもうれしいからみんなに同じ気持ちを感じて欲しいんです。一人占めにしちゃうよりも、そのほうがずっと素敵だもの」
「アメル…」
「あたし、やっぱり人間が大好きです。奪ってばかりだってレイムさんは言っていたけれど、与えることだってちゃんと知っています。だって…マグナ、あなたが、たくさんのあったかい気持ちを与えてくれたから、あたしは今こうしてここにいることができるんですもの。ありがとうございます」
「そ、そんな…っ。お礼だなんて、なんか照れくさいってば!?」
「……」
「それにさ…俺だって、アメルからたくさんのものをもらってるんだぜ?今だってそうさ。本当は、すごく不安で逃げ出したいくらいなのに…君がいてくれるからがんばらなくちゃって思うことができる。負けないって気持ちになれるんだ」
「うれしい…あたしが、そうやってあなたの力になれるってことが…」
「思うんだよ。きっと一人ぼっちのままだったら、俺たち運命に負けていたかもしれないなって。それでも、アメル、俺は君に出会えて良かったって思ってる」
「あたしもそうですマグナ。あなたに出会えたことが本当にうれしいの。あなたのそばにいられて、好きになった人があなたで…」
「アメル…」
「つかまえていてください、あたしのことを…もう二度と…離ればなれになんかならないように…」
「うん…」
「マグナ、ひとつお願いを聞いてくれませんか?」
「なんだい?」
「この戦いが終わったら、あたしを、あなたの生まれた場所へ連れていってください」
「え…」
「見てみたいんです。あなたが暮らしていた本当の故郷を。あなたのこと、もっといっぱい知りたいから…ダメですか?」
「ううん! そんなことないって。約束しよう、アメル。そのためにも、絶対に勝ってみせるから!」
「ええ、約束ですよ?」
第24話
大平原
「どうやら、始まったみたいだね…」
「召喚師の援護を受けて騎士たちが、敵軍を一気に包囲していく作戦か…」
「さすがは各都市から選抜された、聖王都の騎士団です。化け物を相手にまるで、ひるまない!」
「ま、ダテに税金で養われてるワケじゃねーからな…」
「すごい…」
「どうだ、イオスよ。これが、我々が雌雄を決しようとしていた者たちだ。果たして、戦ったならどうなったのか…」
「我々、デグレアの兵もけして劣っていたとは思いませんっ!」
「…そうだな。だが、いずれにせよ優れた兵には違いない。これならば…」
「おかしい…? いくらなんでも一方的すぎる…。これではまるで戦力を無駄に消耗しているとしか思えない」
(ネスの言うとおりだ。こんなことをしてなんの得があるっていうんだ…? ……)
――戦いが長引くほうが我々にとっては都合がいいのです…
「(勝つことじゃなくて戦いを長引かせることが目的…?)でも…なんのために…」
「う…っ!」
「おねえちゃん…どうしたの…?」
「アメルっ!」
「しっかりするんだ!」
「だいじょうぶ…っちょっと、めまいがしただけだから…。それより、聞いて。二人とも…っ。おかしいの…戦いが始まる前はあんなにすごかった感情のうねりがさっきから急に薄れてきてるんです。まるで、なにかに吸い込まれていってるみたいに…!」
「なんだって!?」
「ネス! たしか悪魔が力の源にするものって…」
「人間の、感情だ…悪魔はそれを食らい魔力に変えることができる…」
「メルギトスの狙いはそれだよっ!?」
「しかし、ならばどうして奴はこの場でその力を使わない?」
「当たり前だよ…そうして集めた魔力は別の目的に使うためのものなんだから」
「???」
「黒騎士たちを操ってあの人は、なにを手に入れさせようとしていた?」
「…召喚兵器!」
「ルウが言ってたよな? あの結界は強い魔力に反応することで破壊されてしまうかもしれないって! 俺たちは、完全にメルギトスの術中にはまってたんだッ!!」
「だとすると、ヤツが今いる場所はアルミネスの森か!?」
「急ごう! あんなものをメルギトスに渡すわけにはいかない!」

アルミネスの森
「ふふふふ…っ。みなぎってきますよ私の中に、力が…。怒り、悲しみ、恐怖そして断末魔の絶望。戦争とは、なんと甘美な宴なのでしょう。くっ、くくくくっ。しかし…まだ、足りません。あの時、天使アルミネとの戦いによって失われてしまった私の本来の魔力。それを取り戻す方法はただひとつだけ…。さあ、受けるがいい? 禁忌の地を守り続ける忌々しき天使の力よ!」
どごんっ!
「貴様が守ろうとしたニンゲンの、あらゆる欲望によって…砕け散れえィィッ!!」
キュウーン…ドゴンッ!
――
「ウソ…っ? 結界が、消えてる!?」
「膨大な魔力のなごりが感じとれます。凍てつきそうなほどに禍々しい力を…」
「…(ぎゅっ)」
「マグナ。どうやらお前さんの読みが当たっちまったようだな」
「手遅れだったということなのか!?」
「いや、大丈夫だ!」
「ネス?」
「メルギトスは遺跡の内部に入る方法をもっていない…。あの転移システムはマグナ、君と僕の一族にしか反応しないんだ!」
「そうか!?」
「てことは、野郎が足止めされてる間に追いつけりゃ…」
「まだ、希望はあるということですね!」
「ビビらせやがって、ったく…」
「急ぎましょう!」
――
「ふう…警備システムもこれで沈黙したようですね? では…ん?」

「そこまでだっ!? メルギトス!」
「ほほう、これはこれはみなさん、おそろいで。私の狙いがここだとよくわかりましたね? 褒めてさしあげますよ。ははははは…」
「言いたいことはそれだけか…悪魔め!」
「その遺跡は、二度と触れてはいけないものなんだ。それでも、貴方が召喚兵器にこだわるというのなら…。メルギトス! 俺は、お前を倒してそれを止めるッ!!」
「やってご覧なさい? できるというのでしたらねぇ!?」
――
「く…っ。くくくっ、あはははっ、あははははははっ! さすがは調律者…出し惜しみをしては、どうも、分が悪いようですねえ?」
「ま…負け惜しみなんか言ったって、こわくないぞっ!?」

「降伏してくださいメルギトス…いえ、レイムさん! 貴方は今まで、人間として生きてこれたじゃありませんか? どうして、そのままでいられないんです!? そうすれば、きっと貴方だって…!」
「アメル…」
「人間として…ですか…」
「…まずい!?」
「ふざけたことをぬかすなァァッ!!」
「きゃああああっ!?」
「か、身体が…っ、しびれて…っ」
「押し潰されそ…っ、ぐあああぁぁっ!!」
「たった一撃で…身体の自由を奪ってしまうなんて…!」

「これが…っメルギトスの…本気の力か!?」
「お…っ、おにいちゃん…っ」
「レイム…っさん…っ」
「本気を出したならば、貴様らのようなゴミ物の数ではないということです。さて…邪魔者もおとなしくなったことですし。改めて、遺跡を手に入れさせてもらうことにしますかね」
「不可能だ…メルギトス…。遺跡を起動できるのは僕たちだけだ…っ。お前が、召喚兵器を手に入れることは不可能なんだ!!」
「知っていますとも。この遺跡を起動させることができるのはクレスメントとライルの一族だけ…。魔力と声紋、それにパスワードが必要だというのでしょう?」
「バカな…。どうして、そこまで知っている…? 僕でさえ知らないことを、どうして貴様が知っている!?」
――やめろ…っ、それだけは…ちかづくなぁっ!?
――いただかせてもらいますよ…。アナタのもつその魔力を血識としてねェ!?
――いやだあぁぁ〜っ!?

「まさか…?」
「ふふふふ…マグナさん、ようやく、気づいたようですね。そうです…いただいたのですよ? 血識として…ね。愚かな召喚師たちは自分たちがしたことと思っていたようですが、それもまた、私が偽りの記憶を与えてそう思いこませていただけのこと…。クレスメントの魔力もライルの記憶も。奪ったのは、私です。ひゃはははははっ!! ええ、美味でしたとも。貴方たちの、ご先祖の血識はねえ?」
「そんな…っ!」
「あ…悪魔めえぇぇぇっ!?」
「ひゃははははははっ! あーっはっはっは!! さあ、謎解きはもうここまでです…。調律者の末裔クレスメントの一族の名において!」
――声紋チェックならびに魔力の波動…全て、ライブラリと一致しました…。貴方様を「調律者」クレスメントの一族であると認めます。
「では、みなさん? ごきげんよう…。ひぃーっひっひっひ! ひゃはっ、はははっあははははははっ!!」


機械遺跡内部
「くくくく…ニンゲンのこうした努力は賞賛すべきものなのでしょうね。弱い存在であるがゆえに力を求めてここまでのものを生み出してしまう…。せいぜい、利用させてもらいましょうか?」
――御命令を…
「命令? 私の望みは、最初からひとつだけ…。このメルギトスにふさわしい肉体を作り上げるのです! ロレイラルの機械技術によって、極限まで高められた力で…私が、あらゆる世界の覇者となるために!!」

「なるほどな…。それが、お前の目的かメルギトス…」
「しつこいですねえ? 貴方も…」
「言っただろう? 絶対に、お前にこの遺跡を利用させはしないって…」
「おにいちゃんはね、ぜったいに…うそは、いわないよ? おにいちゃんは…かならず、やくそくまもるもの…っ!」
「なぜです? どうしてかなわぬとわかっていて…貴方は私に挑むのです。死にたいのですか?」

「お前には…多分、わからないよ。人間のことをなにも知らない、お前には。なにを言ったって! わかるもんかよッ!?」
「あはははははっ! この私が、ニンゲンのことをわかってないとおっしゃるとはねえ。ならば、貴方はなにをわかっているのですかマグナよ!?」
「……」
「いいでしょう? そんなにまでして死にたいのなら…望みどおりにッ! くびり殺してくれるわアアアァァァァッ!!」
最終話
「ぐ…っ。ぐおおおぉぉっ!? ぐぎゃあああアアアァァァァッ!!」
「見てっ! メルギトスの身体っ!」
「ボロボロになって朽ちていく…」
「彼のよりしろはとうに死んでしまった召喚師の肉体です。ですから…」
「あるべき姿に…土に還っていくというわけですか…」
「諸行無常、でござるな」
「これで、あの者も忌まわしい悪魔から解放されたということになるか…」
バシッ!

「勝った…? 俺たち、メルギトスに勝てたのかっ!?」
(こくこくこく)!」
「わはははははっ! やりやがったな! マグナっ」
「やったあーっ! 勝った、買ったーっ♪」
「あたいたちの勝ちだよ。これでもう、あいつの野望はおしまいさっ!」
「見事な戦いだったぞマグナ」

「ルヴァイド…」
「お前のおかげで我らも、彼の者に一矢報いることができた。感謝するぞ…」
「ルヴァイド様…」

「……」
「これしかなかったんだ。今の俺たちにはこれしかな…」
「悪魔が滅びることによって、彼の魂もやっと解放されたんだ。そう考えることはできないかい?」

「…うん」
「あとは、主をなくした屍人たちの軍団をなんとかしなくてはなりませんね」
「だな」

「うん、そうだな。先輩たちの手伝いをしにいかなきゃ…」
「その前に、この遺跡を完全に廃棄しよう。天使アルミネの結界が失われた今、このまま放置していくわけにはいかない」
「また、誰かが同じこと繰り返しちゃうかもしれないですもんね」

「できるのか、ネス?」
「動力炉の活動をストップさせることができれば、なんとかなるだろう…。…アクセス!」
「これで、一安心よね? マグナ」

「ああ、これで俺やネス、アメルが背負っていたものも完全に消える…」
ブーッブーッブーッ
「!?」
「ぐあああぁぁっ!!」
「ネスティさんっ!?」
――警告! 警告! 外部より、ハッキング。未知のウイルスが当システムを攻撃中! 防壁も効果ありません。このままでは…しスてム、がガがッのっトらレ、ラレッマ…
「いる…あいつが…まだ、いるよぉっ!」
「ウイルスじゃない! もっと、タチの悪いものが侵入した…。あいつは…っ、滅びてなかったんだ!」
「ふふふふふ…。ひゃははははっ! なかなかの具合ですよ新しいこの身体は! 実にイイ…馴染みますよ。ふはははははははっ!」

「メルギトス…まだ、生きていたっていうのか!?」
「いけませんねえ…マグナさん。忘れてしまうなんて。こうしている間にも私の差し向けた軍団とニンゲンたちは戦っているのですよ…。悪魔の魔力の源になるどす黒い感情を、私に供給するためにねぇ。ひゃははははっ!!」
「それじゃあ…っ」
「戦争を止めない限り、今の私を滅ぼすことはできないということになりますねえ。それにもう手遅れです。この遺跡は、完全に私の手中に落ちました。見せてあげましょう。サプレスとロレイラル、ふたつの世界の力を我が物とした…新たなる悪魔の王メルギトスの姿をッ!」
「だめ…っ! ぜんぶ、のみこまれちゃうよぉ!!」

「悪魔の力が満ちていく。なにもかもが…歪められていく!」
「遺跡をよりしろにして復活する気か…!」
「みんなっ! 逃げるんだぁーっ!」
パアッ!
「ふはははは…っ。ひゃははっ、あはっ! ひゃーっはっはっはっはっはっはァ!!!」

「これは…」
「ヒヒヒヒヒ…これガ、私ノ新たな肉体ですよ。この空間そのものガ私ノ血肉デあり部品デあるわけです。にんげん共ノ欲望ヲ魔力ニ変えて、永久ニ活動する存在…機械魔めるぎとす。そうトでも、名乗っテさしあげましょうか。ヒゃーっはっハっはっハっはっハ!!!!」
「おにいちゃん…みんな…死んじゃうの…?」

「それでも…それでも! こいつを倒さなくちゃ、俺たちの未来はないんだ!!」
「あたしたち、まだ負けたわけじゃありませんっ!」
「そうだとも…ここで、あきらめるわけにはいかない!!」
「調律者ノ一族トしてノ誇りですか…。愚かなッ! 運命ヲ律する糸ハ既ニ、貴様ノ手から離れたノだッ!! 因果ノ律ハ、今我ガめるいとすノ手ニアル…いくらあがこうとも貴様らハ勝てぬッ!! 運命ニよって、敗北するノだアァッ!」
「運命が、俺たちに滅びをもたらそうというのなら…。メルギトス! お前が、その糸を操ると言うのなら…俺は、その運命を超えてみせる!! 因果の律を超えてお前を、絶対に倒してみせるっ!! 「調律者」ではなく「超律者」の名にかけて…俺たちは、最後まであきらめない!!!!」
「ほざけェェェ! ニンゲぇェェぇン!!」
ED
「馬鹿な…? 私ノ言葉デ意ノままニ操られていた、愚かなにんげんガ…感情ニよってたやすく翻弄される、弱い心ノにんげんガ…ッ。こノ私ヲ…倒すトいうノか…。機械魔めるぎとすヲ倒しテノケルトいウノカアァァァァッ! ナゼダアァァァッ!」
「だから、言っただろ。レイムさん…貴方は人間のことをなにも、わかっちゃいないんだって」
「人間の心は、けして言葉や数式で表せるものじゃない。誰にも、理解することなんてできないものなんだ…」
「だからこそ、予想もできない奇跡を起こす力さえ秘めてる。レイムさん…奇跡はね、運命さえも変えてしまうんですよ」
「にんげんノ…ッココロ…ッ ふふ、フハハハッ。ひャーっはッハッハ! たしかに…私は、解ってなかったようですねえ…ですが…そんな私にも、意地というものがあります。ウオオオオオォォォォォォォォォッ!!!!」
「!?」
「おにいちゃんっ、その風にさわったらダメえっ!」
「くくくく…っ。その昔、楽園だったリインバウムが…争いの絶えない世界に変わったのは、こいつのせいですよ。さあ、広がるがいい! 私の身体に蓄積された黒き原罪よッ! 我が命と引き替えにこの世界に、さらなる争いの種をまき散らすのだアァァァッ!!」
――
「なんなの…この、黒い風は!?」
「気をつけろ、ミモザ! 化け物たちの勢いがさっきよりも激しくなってきている!」
――
「どういうことっ!? どうして味方の兵士がお互いに殺しあっているんですのっ!?」
「この風だわ…すさまじい悪意が黒い風になって吹きつけてくる!」
――
「間違いない…原罪(カスラ)だ!」
「悪魔がもたらす人間を堕落させる黒い力…」
「まずいぞ! このままでは、世界中の生き物が欲望のままに狂ってしまう!!」
――
「いひっ、ふひひっ! ひゃはははっ!? ひゃーっはっはっはっはっはっは!!!!」
しゅううう

「(このままじゃ、また同じことの繰り返しになっちまう…)止めないと…っ!」
「マグナ無茶はやめて! メルギトスの身体から放たれているのは強力な邪念の塊です。戦いで消耗しきった今の貴方の状態じゃ、近づく前に、その毒にやられてしまう!!」
「だからって、このまま指をくわえて見ているなんて…。俺はイヤだよ! ちくしょう…っちくしょおォォッ!!」
「……。あたしが…やってみます…」
「アメル?」
「天使アルミネの魂をもつ、あたしだったら、原罪の風を浴びても平気なはず…だから、あたしが止めてみせます!」
「…待つんだ! 僕にはお見通しだぞアメル…。メルギトスによってこの森の結界が破壊されてしまった時から、君の天使としての力は徐々に失われようとしているんだろう」
「!!」
「えへへ…バレちゃってたんだやっぱり…。でも、平気ですよ。まだ、完全に消えてはいないですし…。がんばれば、きっとなんとかなる…ううん、絶対なんとかしてみせますから!」
「もしも…天使の力を使いきってしまったら、アメルはどうなるんだ…?」
「それは…消えてしまう、かもしれないですね…うん…」
「ダメだ…っ! 俺は、絶対にアメルを行かせないっ!! だって、それじゃまた過去の過ちを繰り返すことになるだけじゃないか…。世界が救われたってそんな結末なら…俺はちっともうれしくないよ…ッ!」
「マグナ…。聞いてくださいお二人とも…。ばらまかれた原罪は長い時間をかけて人々を蝕んでいって、いずれまたメルギトス復活の力となってしまうでしょう。今、止めなければまた同じことの繰り返しになるの。あたしなら…それを止めることができるんです。」
「でも…っ!」
「困らせないでマグナ。あたしだって…本当はこわいの…でもね。マグナ、貴方のいる世界だから守りたいんだよ」
「アメル…っ」
「マグナ、それに、あたしは貴方と約束してるじゃないですか」
「あ…。一緒に…俺の生まれた街まで行くって…」
「あたし、今からすごく楽しみにしてるんです。貴方との旅を。そのためにもきちんと終わらせておかなくちゃ…。そうでしょう? マグナ」
「う…うん…」
「ネスティさん…ううん、ネスティって呼ばせてくださいね」
「もっと、早くにそうやって呼び捨てにしてほしかったよ。本当に…」
「彼のこと、よろしくお願いしますね。ネスティなら…安心できるから…」
「引き受けたよ、アメル」
「それじゃ…いってきますね」
「アメルっ! やめろっ! 戻ってくるんだっ!!」
「マグナっ! 君も男なら、きちんとわきまえろっ!」
「離してくれよッ! 俺っ、まだアメルに好きだって、言ってあげてないんだよ! 最後まで、守るって約束したのにっ! なのに、こんな…こんな…っ。これじゃ、あべこべじゃないかぁっ! アメルうぅぅぅっ!」
「あたしは…あきらめない…(羽具現)絶対にっ!!」
「がアァァァァッ!! ア、アルミネぇぇ! 最後の、最後までッ邪魔するかァッ!! なぜだっ!? そこまでして、ナゼニンゲンを…ッ護るう…ッ!?」
「好きだから…。豊穣の天使アルミネも、レルムの村の聖女アメルも…人間のことが…この世界のすべてが大好きだから…! 愛しいから…! そして…それを教えてくれたみんなことを絶対に護りたいからあきらめないの。弱虫だったあたしに立ち向かう勇気をくれた人たちのことを護ってみせるの!」
「り、理解…っ! できな…な…い…ッ! 自分が滅びて…っそれで、貴女は…本当に幸せだと言えるのですか…っ? 生きてこその…っ。しあわせ、じゃないのです…かッ!?」
「そんなことないですよレイムさん…あたし…しあわせですよ…。このまま…とけてしまいそうなくらいに…。……」
「こいつ…すでに…息絶えて…っ!? ぎ…ッ! ギィヤあああぁぁぁァァァァ〜ッ!!!!!」
――ごめんね…マグナ…。あたし、約束…守れないみたい…
「アメルっ!」
「また…っこれじゃ、また同じじゃないか! 繰り返しになっただけじゃないかッ!! イヤだよ…っ! アメル…っ。アメルぅぅ〜ッ!!!」
――
「原罪の風が…やんだ…?」
「エクス様…空から、なにかが舞い降りてきますぞ!」
――
「兵士たちが…みんな、戦うことをやめた…?」
「それだけじゃないわ。ケルマちゃん、見て!」
「屍人たちや鬼が…消えていく…」
「いったい、この光はなんなの…?」
――
「なんて、あたたかい光なんだ…疲れが癒えていく。いや…それだけじゃない」
「すごく、やすらいだ気持ちになっていくわ。まるで、お母さんの腕の中に、抱かれてるみたいに…」
――
「いったい、なにが起こったっていうの?」
「わあ…!」
「こいつは…あの遺跡が、そのまま樹になったのか!?」
「見てっ! この樹の葉っぱがあの黒い風をどんどん吸い取ってる!!」
「それだけじゃない。この光の雫もあの樹から降り注いでいるんだ」
「そんなことよりもマグナたちはいったい、どこにいったんだよ!?」
「おにいちゃん…どこ? どこなの!?」

「ここだよ…」
「おにいちゃん…」
「うん…俺たちは、無事だよ。だけど…っ!!」
「ねえ、アメルは? あの子は、どこにいるの?」
「……」
「まさか…!」
「アメルは…メルギトスを止めるために…っ、消滅するのを覚悟で最後の力を…!」
「……」

「守ってくれたんだよアメルは…人間のことが好きだっていうだけの理由で今度もまた、あの時と同じように…。こんな姿になってまで、俺たちのこと、守ってくれたんだよっ!」
「それじゃ、この樹はあの子が…!?」
「アメル……っ う…っ。うああぁぁぁぁっ!! アメル…っ アメルうぅ〜っ!」

スタッフロール

戦いは終わった…
原罪の嵐によってリィンバウムに混乱と破壊をもたらそうとしたメルギトスの最後の企みは
彼女の命がけの行動によって完全に潰えたのだ…
禁忌の森に隠されていた召喚兵器たちは永遠に抹消されて
そこには、今…一本の巨木がそびえたっている
聖なる大樹
人々が、その樹のことをそう呼ぶようになってから
二度目の季節が…巡ろうとしていた…

聖地の森
「…マグナ? まったく…! さっきから、何回呼んだと思ってるんだ」
「ごめん、ごめん…」
「まあ、今日に限っては仕方がないがな。アメルのことを考えていたんだろう」
「うん…」
「メルギトスは滅び去り戦いの爪跡も、すでに消えつつある…・だが、僕たちの戦いはまだ終わってはいない。あの日から、ずっと続いている…。まして…マグナ。彼女のことを誰よりも好きだった、君にとってはな…」
「あの日の今日…アメルはいなくなってしまったんだよな。笑顔のまま…永遠に…」
「マグナ…。望みを捨てるな! そのために、僕たちはここにいるんだろ! 彼女を助ける方法は必ず、あるはずなんだ。きっと…! それに、今日はみんなが彼女に会いに来る日でもあるんだぞ。しっかりするんだ」
「うん…わかってるよ。わかってはいるんだけどさ…。だけど…っ」
「まだ、すこし時間があるな…。一足先に…彼女に挨拶をしに行くか?」
「え、でも…」
「そんな、沈んだ顔のままでは、みんなに余計な心配をかけるだけだからな。アメルと会って…叱ってもらってこい」
「うん…」

聖なる大樹
「早いものだな…。あれから、もう季節がふたつも巡っていったなんて…」
「聖なる大樹…。この樹がアメルだって知っているのは、多分俺たちだけ…。あの時から、ずっと邪悪な魔力を吸収して消化し続けているのも」
「だからこそ…僕たちはこの樹のいや、彼女の護人になったんだ…。いつか、この樹の中で眠っている彼女が目覚めるのを信じて」
「はははは…っ。起きるかどうかさえもわかってないのにな」
「不甲斐ないな…これだけの月日を使って、調べているというのに…。手がかりさえも…つかめずに…ッ」
「ネス…? ごめん、俺…自分一人だけ、勝手に悲しんでると思って。ネスの気持ち…考えてなかった…ひどいことしてた!?」
「いいんだ…それよりも…。笑ってあげなくちゃな彼女のために…。僕たちは、笑っていなくちゃいけない。彼女の分まで、幸せにならなくちゃ…」
「うん…」


聞こえるかい、アメル
君の愛した世界は今もこうして息づいているよ
相変わらず、俺たちは不器用な生き方ばかりしかできていないけど…
でも、君は言ってたよね
人間は自分自身の力だけで変われるんだって…
そんな人間のことが愛しいって…
だから、俺も信じるよ
いつかきっと…誰も悲しまずにすむ未来がこの世界におとずれるって
だから…ずっと、ずっとこの場所から、俺たちを見守っていてくれるかい?
なあ? アメル…


「そろそろ戻ろう。みんなも、じきに集まってくるだろうし。ハサハだけに応対させておいたら心配だからな」
「うん、それじゃ…」
――いるよ…
(えっ?)
――ここに…ここに、いるよ
「どうしたんだ?」
「この声は…まさか…っ?」
――やくそくを…したから…。かえって…きたんだよ…
「アメルの声だ…っ間違いないっ!」
「なにを言ってるんだ! 僕には、なにも…」
――ほら、ここ…あなたの…すぐ、そばに…
「アメルっ!」
「マグナっ! どこへ行くんだ!?」


「アメル…っ!!」
「そんな…信じられない…僕まで…幻を見ているとでもいうのか…!?」
「幻なんかじゃない!! アメルは…っ帰ってきてくれたんだ。俺とした約束のために帰ってきたんだよ!」
「ん…っ。ふぁ、あ…っ」
「アメルっ」
「あ…っ、マグナ…。おはようございます」
「お、おはよう…っ」
「あたし、ちょっと寝坊しちゃったみたいですね…。お腹すいてるでしょ? ごめんね、すぐにご飯の用意しますから」
「いいんだよ…っ。今、俺…っ、胸がいっぱいだからっいいんだ…っ」
「どうしたんですか? なにか、悲しいことがあったんですか?」
「アメル…っ!!」
「あ…っ。は、恥ずかしいですよマグナ。ネスティ、見てるよ。それに、あたし、服をどこかでなくしたみたいで…っ。裸、だから…」
「好きだよ…! アメル…っ。だから、もう絶対にどこへも行かせない! ずっと、このまま俺の側にいてくれよお願いだから…っ」
「うん…あたしも、貴方のこと好きですよ…。だから…もう、泣かないで。あたしの大好きな貴方の笑顔を、見せてください…ね」
「うん…っ」
「他のみなさんは?」
「もうすぐ、会えるよ。すぐに…。きっと、君のことをみんなも…待ってたから…」
「大変! それじゃあ、お出迎えの準備をしないと…手伝ってくれますか? マグナ」
「ああ、もちろんだよ!」
「それじゃあ、急いで戻りましょう」
「あっ、アメル!」
「はい…」
「ひとつだけ、まだ君に言いたいことがあったんだ…」
――おかえり…

天使は舞い降りた

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