マグアメ的会話+他その2。

マグナ→■ アメル→■ ネスティ→■ そのほかの人→■

第7話
モノローグ
結局、その日は出発どころじゃなくなってしまった
召喚術を使う海賊との戦い
金の派閥の議長にしてミニスのお母さんでもあるファミィさんとの出会い
またしてもいろんなことがいっぺんにおきたせいで
疲れてるはずなのになかなか眠れない
熱っぽい頭を冷やすために道場の屋根に上がってみると
海原の上に月があった
ゼラムとはまた違った輝きで
あの月が満ち欠けて繰り返しめぐっていくように
俺もまた、旅の中で色々な人たちとめぐりあっていくことになるんだろう
潮騒の音を遠くに聞きながら
俺はなんとなくそんなことを思っていた


夜会話

「下町の人たちがみんな無事で、本当によかったですよね?」
「うん、壊れた家もすぐに元に修理されるみたいだし」
「砲撃が始まった時あたし、すごく不安になったんです。レルムの村みたいなことになっていたらどうしようって」
「けど、戻ってきたらみんな拍手で出迎えてくれるんだもんな」
「ええ、たくさんの人が「よくやった」ってほめてくれて。本当にあったかい人ばかりで…」
「なにもかも、きちんと片付いたらさ。また、みんなでここに来ような?」
「ええ、絶対に…約束ですからね?」
――ささやかだけど親切にしてもらったみんなへの恩返しにはなったかな…?
第8話
モノローグ
レナードさんの弾丸に貫かれて屍人使いの身体は砦の下へと墜落していった
彼の行為を責めることなど誰にもできなかった
ひと時とはいえ、彼はこの砦の一員だったのだから
気を失ったアメルを休ませる間俺たちは動かなくなった人々を簡単に弔った
パッフェルさんは結局見つからなかった
そして、ガレアノの死体も
何かが動き出している そしてその渦に間違いなく俺たちは巻き込まれようとしている
言い知れぬ不安を胸に抱きながら雨の中、俺たちはファナンへと引き返していく
まるでそうすることで得体の知れない何かから逃げようとするかのように

夜会話
「こんなところにいたのかアメル…」
「マグナさん」
「熱があるのにこんな場所で夜風にあたったらダメだよ」
「…… あたし、どうしてあんなことができてしまったんでしょう?」
「え…?」
「操られている人たちの心が、触れてもいないのに流れ込んできて。それがかわいそうで頭の中が真っ白になったと思ったらあんなことに…」
「……」
「なんだかすごく不安なんですあたし…。自分がどんどん、違う存在に変わっていってしまうみたいで。すごく、こわい…」
「気にしないほうがいい。今日のことは、状況が普通じゃなかったんだ。だから、あんなことが起こっただけだよ。俺から見て、アメルはアメルのままだよ。なにも変わってなんかいないって」
「……」
「身体が弱ってるから気持ちも弱くなってるだけさ。さあ戻ろう?」
――何も変わっちゃいないよ。変わるはずないじゃないか…
第9話
部屋2
「……アメル?(まだ眠ってるのかな? だったら、起こすのも悪いし様子をちょっと見るだけにして…)
 あ…」
「え…?」
「……」
「きゃあああっ!?」
「あわっ、あわわっ! うわわわわあっ!!」
――
「ご、ゴメンっ! ノックしたんだけど返事がなかったからそれで…」
「……」
「まさか、その…ほんとにゴメンっ!」
「あ、あの…っ見えちゃいました?」
「う、あ、見た、けどっ背中だけ! 他のところは全然だからっ!?」
「そうですか…やっぱり…」
「え?」
「あたしの背中って自分では見えないけど変な形のアザがついてるから…恥ずかしくて…」
(そういえば、右肩のあたりにそんなものが見えたような…)
「変ですよね、やっぱり」
「そんなことないって! ちっとも変なんかじゃないよ。言われるまでそんなの気づかなかったくらいだし、俺としては問題ないし…」
「え?」
「ととっ、とにかく! 気にしなくていいってことだよっ!」
「そうですか? よかったぁ…」
「(自分で見られない位置だから、余計気にしてたんだろうな。でも、あのアザ何かの傷跡みたいに見えたけど…何が原因でついたものなんだろう?)ところで身体の具合はどう?」
「ええ、もう大丈夫。いつでも出発できます」
「そっか。でも、カゼはすぐにぶり返すものだからな。出発の準備が終わるまではおとなしく寝てるんだ」
「でも、寝てるのってすごくたいくつなんですけど…。もうベッドから出たいなー、なんて…」
「アメルぅ?」
「…はーい」

モノローグ
今まで取り乱さなかったことのほうが不思議だったのかもしれない
祖父の言葉を信じてやっとたどり着いた場所 そこにあるはずの村はなく
悪魔を封じたという禁忌の森が広がるばかり…
アメルを襲った絶望感はどれほどのものだっただろう
間違いだと思いたかった
本当は別の場所にその村はあって、彼女の祖母はそこにいるのだと信じたかった
けれど、それを証明する術を俺たちはもっていないのだ
残された望みはひとつ 俺たち自身の目で、真実を確かめるということだけ
その結果がさらなる悲しみを彼女にもたらすとしても避けることはできなかった

夜会話
「ケイナのおかげでなんとか、あの場はおさまったけど。(結局アメルとはあれきり話せずじまいか…)
今は一人にして欲しいって言ってたもんな。……。大丈夫だよな? 明日になったらきっとまた、いつもみたいに笑顔でおはようって言ってくれるよな? きっと…」
――そうだよな…アメル…
第10話
→(禁忌の森探索)なりゆきまかせ
「まあ、いっか。適当にあまったとこに入れば…」

―バシッ!
「…いてっ!?」
「なーに、ぼけっとしてんだよマグナ」
「なんだよ、フォルテいきなり…」
「文句を言う前にほれ、アメルの様子を見てみろ?」
「……」
「すっかりしょげきって、あれじゃ、せっかくの美人さんが台無しだ。もったいねーだろ?」
「う、うん…」
「あの子は今、必死で不安と戦ってるんだ。誰もそれを助けてやることはできない。だったら、せめてそばについててやりな? 彼女を守るってことはそういうことでもあると、オレは思うぜ」
「……」
「ほれ! わかったらとっとと行ってこい!」
「う、うんっ!(アメルのそばにいよう。きっとまだ不安でいるだろうし…ちょっとでも元気づけてあげられるといいんだけどな)」
――
「昨日はごめんなさい。あんなにみっともなく騒いじゃって…」

「気にしないでいいよ。俺たちも気にしてないんだからさ」
「……」
「アメルは、爺さんの話が嘘だったと、今も思ってるのかい?」
「…わかりません。信じていたのか、信じていたかっただけだったのか… あの話が本当に祖父の口から聞かされたのかどうかも自信がない」
「そっか…。それじゃ、あの話がもし嘘だったとしたらどう思う?」
「えっ?」
「爺さんのこと恨むかい?」
「そんな! そんなこと絶対にしませんっ!! だって、だって! おじいさんはいつもあたしのことを大切に考えて…」
「わかってるじゃないか、ちゃんとアメルは。何を信じればいいかちゃんと自分で答えをみつけてる」
「あ…!」
「爺さんが言ったことが本当のことでも、嘘だったとしても。それは全部君のことを大切に考えた結果だ。そうだろう?」
「うん…」
「だったら、それを信じつづけていればいいのさ。不安になることなんてないんだよ。俺たちがついてる」
「うん…っ」

悪魔との戦闘後
「ちくしょう! あいつら、まっすぐ俺たちだけ追いかけてきやがる…」
「はぁ、はぁ…っ」
(このままじゃアメルの体力がもたない…)
「マグナさんあたしはいいから。先に、逃げて…」
「バカを言うなっ! そんなことできるわけないだろう!?」
「でもっ、あの悪魔はあたしのせいで外に出てきてしまったものなんですよっ!? あたしを殺そうとしているんです…だからっ!」
「だから、俺は奴らから君を守らなくちゃいけないんだ!」
「…!」
「約束しただろう? 俺は君のことを絶対に守ってみせるって」
「グルルルウッ…」
「俺の後ろに隠れるんだ。何があっても絶対あきらめちゃダメだ!」
「今度コソ殺シテヤル。モウ二度ト、キサマの光ノオリにトラワレぬヨウにナアァァ…
 忌々シき光ノ手先ドモ ソシて召喚師、調律者ノ一族めガァッ!!」

「調律者…?(なんだろう…その言葉、どこかで聞いた気がする…)」
 
――因果を律する…なるほど…
 ――光栄に思えよ…なぜなら…
 ――これがゲイル…創造主…
 ――素晴らしい…
 ――涙、だと…? どうして…誰のために…
 ――イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダァァァァァァッ!!

「マグナさん避けてえぇぇっ!!」
「…!?」
「死ねエェェイィッ!!」
「うわぁぁっ!」

モノローグ
もう充分です、と 最後にアメルはそう言った
これ以上危険をおして村を探すことはないのだと
伝えられていたとおり森はまさしく禁忌の地だった
現れた悪魔たちとの戦いで俺たちはそれを痛感した
今まで夢物語と思っていた伝説が、揺るがぬ現実となって俺たちの前に姿をあらわしていく
それらのひとつひとつが無性に俺の心をかき乱す
自分でもわからないなにかがひしひしと胸に迫るのだ
それがなんなのか知りたいという気持ちと、知るべきではないという気持ちの間で俺の心は揺れつづけていた

夜会話
「結界があたしの力で壊れてしまう瞬間。あのとき、あたしは感じたんです。マグナさんと出会った時に感じたのと同じ、懐かしいなにかを…」
「アメル…」
「あたしは、あの場所を知っていたんです!? そんなはずないのに知ってたんですっ! これってどういうことなんでしょうか? あたし…おかしくなってしまいそう…」
「俺にもわからないよ。けどね、アメル。俺もあの森に入ったとき心の中がざわめく感じがしたんだ」
「えっ?」
「ああ、嘘じゃない。聞き覚えのない言葉が頭の中で渦を巻いて。自分が自分でなくなるみたいでとても不安だった…」
「あなたもそんなふうに…」
「こんなこと言っても慰めにもならないかもしれないけど。君が体験したそれは個人の異変によるものなんかじゃないんだ。その証拠として、俺がいるんだから…」
「…はい」
――あの森には何かがあるんだ…アメルや俺に関係する何かが!
第11話
モノローグ
気を失ったシャムロックさんを背負うフォルテに続くように
俺たちは陥落したローウェン砦から落ち延びていった
黒の旅団は追ってこなかった
それが混乱によるものなのか それとも黒騎士の意思によるものなのか、それはわからない
ネスは言う 屍人を使うガレアノも魔獣を操ったビーニャもおそらく同じ仲間であろうと
確証はない けれど、俺たちはみんなそれが本当であることを肌で感じていた
そして、もうひとつはっきりとわかるのはデグレアがその戦意をもはや剥き出しにしたこと
戦争が始まろうとしていた

夜会話
「ここまで、あたしの噂が広がっているなんて思いもしませんでした」
「俺はフォルテから聞くまで全然知らなかったけどさ。それは聖王都がやたら広い街だったせいなのかもしれないな」
「噂が広がった原因には心当たりがあるんです。村の人たちは、みんな聖女の癒しを求めてやってくる旅人からの収入で貧しい村の暮らしが変わるのではないかと信じていましたから」
「村人たちが、宣伝していたってことか…」
「今にして思えばおじいさんが心配していたのは、このことだったのかもしれません。噂を聞きつけて来る人たちが、必ずしも村に幸福をもたらすとは限らないって… 今になってからわかってもしかたのないことですけどちょっと、くやしいですよね…」
「……」
――高い代償だったよな確かに…
第12話
(マグアメ関係ないけど)
ハ「……(ぎゅっ)!」
マ「おい、どうしたんだハサハ。急に立ち止まって」
ハ「…やだ。いきたくない… ねえ、かえろう!?」
マ「ちょっと、こらっ。そんなとこにしゃがみこむなよっ!?」
ケ「あら、珍しいわねハサハが駄々をこねるなんて」
マ「今まではこんなことなかったのに…ほら、ちゃんと立ってハサハ!」
ハ「(ふるふるふるっ)!」
ケ「ここまで歩きづめだったもの、きっと疲れちゃったのよ。ほら、おいで? 私がおぶってあげる」
マ「そんな、ケイナ悪いよ…」
ケ「いいから、いいから。ほら、あなたが怒るからおびえちゃってるわ」
ハ「……(ぎゅっ)」
ケ「私なら平気だから、しばらくこうしていてあげましょ、ね?」
 
…ケイナおかあさん…

モノローグ
そして、シャムロックさんはゆっくりと歩き出した
悲しみを思い出の中に閉じ込めて、前へと進むために
人の心の弱さにつけこみ身も心も鬼へと変えてしまう鬼神使いキュラーの前にトライドラは屈した
けれど、滅びたのではない
その志は一人の騎士の中へと受け継がれ、絶ゆることなく生き続けていくのだから
そんな彼の姿に勇気づけられるようにして、俺たちもまた前へと進んでいく
向かう先は、港町ファナン デグレアが次に狙うであろう物流の要となる都市だった

夜会話
「マグナさん、あたし決めました。もうこれからは自分の持ってる力をこわがらないって」
「えっ?」
「あたし、何度もこの力をうとましく思いました。黒の旅団に村が襲われた原因も、皆さんが危ない目にあってきたのも、自分がこんな力を持ってるせいだって思いつづけてました。だけど… 鬼にされた人たちを見たとき…思ったんです。鬼が、人の心を食い荒らしてしまう病気だとしたらあたしがもっと強い力を使えていたら助けられたんじゃないのかって…」
「アメル…」
「ただの思い込みなのかもしれません。でも、どうあってもこの力を手放すことができないのなら、もっともっと役に立つようにしたい。この力が、あたしにとって不幸をもたらすものだったとしても周りの人たちに幸せを与えることはできると思うんです」
「思いこみなんかじゃないと思うぜ。だって、アメルはその力で俺たちを何度も助けてくれてるんだからさ! きっと、できるよ?」
「マグナさん…」
――力が不幸を呼ぶのなら、そのぶん俺たちが幸せにしてやればいい。そうだろ…?
第13話
ファナン豊漁祭
「お祭に、あたしを?」
「うん、もしよかったら一緒に見物しないか?」
「はいっ、行きます! 連れてってください」
(へえ、すっごい喜びようだなあ)
「えへへ…あたし、村のお祭しか知らないからすごく楽しみです♪ あ、でも…洗い物をすませないと」
「だったら、手伝うよ。二人でやったほうが早いだろ?」
「…すいません。それじゃ、洗ったお皿拭いてくれますか?」
「うん、了解」
――
「うわあ、ほらほらマグナさん、あれ、見てください!」
「ははは、アメルったらまるで子供みたいにはしゃいじゃってさ」
「もぉ、だって…本当にすごく楽しいんですもの! パレードは見ていて飽きないし、さっき買った焼きイモさんだって、ほら? こんなにホクホクで、バターもたくさん染みてて…んーっ、とってもおいしくて幸せですっ」
「お祭りで食べるものっていつもより、ずっとおいしいからね。他にも、いろいろためしてみるといいよ」
「あ…! マグナさん、あれやってみません?」
「へえ、くじ引きハズレなし、か…
 そうだな…
→アメルもやろうよ
 このヒモを一本引けばいいんだな? よーし…」
「どれにしようかなあ…」
「よっ…おっ?」
「はいよ、兄ちゃん! 15等賞は、可愛い召喚獣のぬいぐるみだよっ!」
「あたしは、これ…えいっ!」
「大当たりぃ〜っ!」
「えっ、えっ?」
「6等賞は、珍しい異世界の懐中時計だ、お姉ちゃん、これは価値もんだよぉ?」
「は、はあ…」
「よかったじゃないかアメル」
「でも、あたしあんまり時間を気にしないですし…そうだ…! マグナさんにさしあげますよ」
「えっ、でもそれすごく高いものだよ?」
「いいんですよ。使わないあたしが持っていても、仕方がないですもの」
「んー…それじゃ、こいつと交換ってことにしよう」
「いいんですか?」
「ああ、ぬいぐるみなんて、それこそ俺が持ってたって意味がないしね」
「くすっ、なんだかプレゼント交換してるみたいですね?」
「うん、そうかも」
――
「うわあ…」
「アメルは、花火を見るのははじめてか?」
「ええ…こんなに、キレイなものだったんですね。すごいなあ…」
「うーん、確かにここまで盛大なのは俺も初めてだよなあ」
「マグナさん」
「ん…?」
「あたし、今まで生きてこられてすごくしあわせだって思います…
 何度も落ちこんで弱音を吐いて吐いて、いろんな人たちに迷惑をかけて。本当に何もかもイヤになったりもしたけれど、でも…つらいことだけじゃなかったから」

「アメル…」
「今みたいな楽しい思い出を、あたしもっともっと作りたい。だから、負けません。負けないようにがんばりますから、だから…最後まで、見ていてくれますか?」
「うん…楽しい思い出、一緒に作っていこうな。つらいことを思い出す暇なんかないくらいめいっぱいにさ?」
「…うんっ」
第14話
夜会話
「じいさんの傷の具合はどうだった?」
「はじめに負った傷が無理をしたせいでひどくなってました。よほど、無理をしていたんでしょうね」
「いたたまれなかったんだろうな…村が、こんな風にされたから」
「そうですね…傷を治すためにおじいさんの心に触れたときに、あたし感じたんです。おじいさんがこの村のことをどれだけ大切に思っていたのか。ロッカやリューグ、それに、あたしをどれだけ心配していてくれたのかを…」
「アメル…」
「やっぱり、あたしはおじいさんの孫娘です。血がつながってなくたって、そんなこと関係ありません。だって…。ちゃんと心がつながっているんですから…それだけであたしは充分にしあわせです」
「うん、そうだよな」
――つちかってきたキズナの強さはそう簡単にほころびるものじゃないもんな…
第15話
秘めたる刃
「シオンの大将さんが、そんなことを…」
「いったい、どうしてそんな噂が広まっているのかはちっともわからないけどさ。なんか、イヤだよな?」
「そうですよね…このところの事件といい、あたしたちの知らないところで得体の知れない何かが動いている、そんな気がして不安で…」
――ぐう〜〜〜。
「あ…やだっ」
「あはははっ不安でおなかがすいたってことかな?」
「もぉ…マグナさんのいじわる…っ」
「冗談はともかく。最近、アメルごはんをあんまり食べてないだろう?」
「あ…やっぱりバレちゃってましたか。あたしが悪いんです。なんか、いろいろと考えすぎて…ついつい、食べ物がのどを通らなくて」
「ダメだよ? こうやって、からだはちゃんと食べ物を欲しがってるんだ。食べないと、そのうち倒れちゃうぜ?」
「はい…ごめんなさい」
「…そうだ! これから、大将の店にソバを食べに行こう?」
「これからですか?」
「うん、食欲が出てるうちに、食べたほうがいいに決まってるし。それに…俺もちょっと、小腹が空いてたりするし?」
「ふふっ」
「なあ、いこうぜアメル」
「…うんっ!」
――
「こんな遅い時間にいらっしゃったのははじめてですよねえ。さては、恋人同士で夜のお散歩ですか?」
「な…! ななっ、なんてことを言うんですかぁっ!?」
「そうですねえ…もしかしちゃうとそういうことなのかもしれないですよ?」
「…え?」
「くすくすっ♪」
「あはははははははっ」
「うう…っ。二人とも、俺で遊んで楽しんでる…?」
マグナは天そば。

→(機械遺跡探索)アメルと行く
「……」
「な…!? どうしたんだアメル、ひどい汗じゃないか!」
「あのときと…同じなんです…この景色を見た途端になんだか、胸の奥が熱くなってきて…もう少しで、何か思い出せそうな…。なのに…それが…ひどくこわい…こわいんです…っ」
(こんなにも…震えて…。いったい、何がアメルを不安にさせているんだ?)
第16話
ハルシェ湖畔
「遅くなっちまってごめんよ、アメル」
「マグナさん…」
「ずいぶんと遠回りになったけど、やっと俺、君に会う勇気ができたよ。すべてを受け止める覚悟ができたんだ」
「……」
「もう俺は逃げない。だから、アメル話してくれないか。君が今、思っていることのすべてを…」
「…わかりました」
――
「ネスティさんから聞きました…天使アルミネだったあたしは、お二人の一族に呪いをかけたそうです…。クレスメントの一族からは魔力を、ライルの一族からは召喚兵器の知識を消し去ってしまったらしいんです…」
「そうか…。だから俺は自分が召喚師の末裔だって知らずにいたんだな。あははっ、どのみちみなし子だったからあんまり関係ないか?」
「ごめんなさい…」
「アメルが謝ることなんてないよ!? 謝らなくちゃいけないのは俺なんだ。君を苦しめる原因を作ったのは、俺の一族なんだし…」
「マグナさんあたし、ちゃんとわかってます。あなたを責めるのは間違いだってわかってるんです」
「アメル…」
「それに…マグナさんはあたしに、たくさん優しくしてくれたじゃありませんか?」
「でも…」
「過去のことなんて関係ありませんっ!! あたしはアメルです! 天使アルミネである以前に…レルムの村の…アメルなんです…」
「……」
「あなただっておんなじです。クレスメントの…調律者の一族であるよりも先に…あたしにとって大切な人なんです…」
「アメル…」
「信じて…くれますか…?」
「あたりまえだろ…! そんなの…っ」
「今のあたしがここにいられるのはあなたのおかげなんです。不安でおかしくなりそうだったときも悲しくて胸が張り裂けそうだったときも。いつも、あなたは勇気づけてくれた。弱虫のあたしを、強くしてくれた…」
「俺はただ、きっかけをつくっただけだよ」
「おぼえていますか? このお屋敷を出て初めて、自分たちで旅立ったことを決めたとき。マグナさんは、あたしにこう言ってくれましたよね? あたしの背負っているものを、一緒に支えてくれるって」
「ああ…」
「今度は、あたしがあなたのことを支えてあげたい…どれだけかかってもかまいません! あたしは、あなたの、マグナさんのそばにいたいんです」
「アメル…」
「マグナさん。それが、今のあたしが心から願っていることなんです…」

夜会話
「アルミネが、どんな天使だったかですか?」
「うん、ちょっと知りたくなってね」
「そうですね… 豊穣の天使と呼ばれていただけあって大地に草木を芽吹かせたり弱っている生き物に活力を与えることができたみたいです」
「それじゃ、アメルの聖女の奇跡も?」
「きっと、その力の名残でしょうね。もっと早くこのことに気づいてたらよかったのに…」
「なんで?」
「だって、そうすれば村の畑を、もっと豊かにしてあげられたじゃないですか? きっと、おイモさんだって、たくさんとれたはずですよ!」
「は、はあ…」
――天使の力って…そういう使いかたしていいのかなあ?
第17話
夜会話
「私のしたことがまた、みなさんにご迷惑をかけちゃいましたね」
「気持ちはわかるよ。俺だって、まだ信じられずにいるんだ」
「レイムさんが…黒の旅団の一員だったなんて…」
「でも、ひとつだけわかったことがあるよ。かばおうとした君をねらって召喚術を使ったとき。あの人…本気だった…」
「……」
「もしも、またあの人が同じことをするのなら…そのときは俺、あの人を憎んでしまうかもしれないな」
「でも…それでも…あたし…」
――信じたい、か…

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